コンテンツに移動
顧客事例

LIXIL: 全世界 53,000 ユーザーのビジネス基盤を Google Workspace に刷新し、新たなシナジー創出で生産性を大幅向上

2025年12月5日
https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/hero_image_lixil_horizontal_1.max-2500x2500.jpg
Google Cloud Japan Team

トイレ、お風呂、キッチンなどの水まわり製品と、窓やドア、インテリア、エクステリアなどの建材製品を開発・提供する株式会社 LIXIL(以下、LIXIL)。同社は、「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」という企業パーパスを掲げ、150 以上の国と地域で約 5 万 3,000 名の従業員が活躍するグローバル企業です。この巨大な組織が、事業をさらにドライブさせるためのコラボレーションウェアとして Google Workspace を選択した理由、その大規模な移行を成功に導いたプロセスと成果について、プロジェクトをリードした 2 名に伺いました。

利用しているサービス:
Google Workspace, Google Workspace with Gemini, BigQuery など

新しい時代のワークプレイスとして Google Workspace を導入

全世界で展開する事業の効率化に向け、業界に先駆けて DX を推進してきた LIXIL。同社はパブリック クラウドの導入にも積極的で、社内データ分析基盤 LIXIL Data Platform(LDP)の構築、ノーコード開発ツール AppSheet の全社的活用など、業務のさまざまなシーンで Google Cloud を効果的に利用してきました。そんな同社が新たに取り組んでいるのが、「Digital Workplace 2.0(DWP2.0)」プロジェクトです。この管理チームのリードを務める Digital 部門 System Infrastructure 部 青木 涼氏は、プロジェクトの背景を次のように解説します。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/_K3A9320_small.max-1500x1500.jpg

「DWP2.0 プロジェクトが目指すのは、すべてのデータをクラウドに移行することです。LIXIL はコロナ禍以前から在宅勤務を推奨しており、現在も多くの従業員がリモートで働いています。しかし、従来の環境では、重要な業務データを個人の PC に保存することができるようになっており、不正アクセスやデータ漏えいのリスクが高い状態でした。そこで、クラウド環境にデータを集約し、PC やモバイル デバイスを紛失した際のリスク軽減、およびランサムウェアを始めとしたサイバー攻撃への対策を強化するために進めているのが、Google Workspace の導入です。」

青木氏は、Google Workspace について、従来のビジネス環境で必要とされてきた全ての機能が、セキュアなクラウド環境下で一元管理できる点を高く評価しています。

「シームレスなコミュニケーション、安全なファイル共有、そしてインターネット環境さえあればいつでもどこでも業務を行える環境は、会社として在宅勤務を推奨する上で、私たちが目指していたデジタル ワークスタイルそのもの。Google Workspace は、まさに私たちのニーズに合致したソリューションでした。加えて、BigQuery をはじめ社内で広く使われている Google Cloud プロダクトとの親和性が高く、ビジネス全体で大きなシナジーが期待できたことも、導入決断を大きく後押ししました。」

グローバル 5 万 ID の大規模移行を成功に導いた、現場を巻き込む緻密なコミュニケーション

Google Workspace 全社導入の移行プロセスは、2021 年 11 月の企画開始から、2024 年 9 月の旧グループウェア完全停止まで、約 3 年間に及びました。プロジェクト発足当初から移行業務を支え、現在は Digital部門 Global Automation & Operations統括部に所属する和氣 裕子氏は、この大規模な移行を成功に導くために何より重要視したのは、「従業員の納得感」だったと語ります。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/_K3A9516_small.max-1500x1500.jpg

「私たちの最大の課題は、約 5 万人の従業員全員に『納得して』移行してもらうことでした。そのため、現場とのコミュニケーションには手間を惜しまず、多くの時間を充てました。早い段階から各部門のリーダーやキーパーソンとのミーティングを実施し、移行時にボトルネックとなりそうな業務や、特に手厚いケアが必要な業務がないかなど、ヒアリングを重ねていきました。一方、各部署からは、デジタル変革の推進担当を選出してもらい、私たち CoE(Center of Excellence)から推進者、推進者から従業員へと、情報やノウハウが伝わる体制を整えていきました。実は、この手法は、Google Workspace に先駆けて実施した AppSheet 導入の時にも採用したもので、そこでの経験が生きた形となりました。」

この「推進者」は、情報発信時にも重要な役割を担っていたと、和氣氏は続けます。

「社内 SNS などでの全従業員に情報を発信する前には、必ず先に推進者に情報を提供し、各部署の視点で伝わりにくい点、考慮が必要な点はないか、といったフィードバックを受け、内容をブラッシュアップすることを徹底しました。向き合う推進者の数は、国内外で 500 名を超えましたが、スムーズな情報拡散と理解の浸透に大きな貢献を果たしてくれました。」

準備を重ねて迎えた 2022 年 9 月、全従業員へ Google Workspace のアカウントが発行されます。ただし、サービスの切り替え自体は、段階的に行われました。

「一斉にサービスを停止すると、直前に移行作業が集中し、混乱を招くことが予想されました。そのため、まずはメールとカレンダーから始め、ファイル ストレージ、社内イントラネット、各種業務ツール、そして最後に、旧ツールで作成された文書ファイルやリストデータの順番で移行を進めていきました。業務データの移行は、新旧環境の並行利用期間中に、基本的には利用者自身のタイミングで行えるようにしました。旧サービスの停止も段階的とし、メールは翌 2023 年 5 月、それ以外の機能は 2024 年 9 月に停止期限を設定して利用者に移行を促しました。」(和氣氏)

和氣氏は、移行の中での意外な発見、効果についても明かしています。

「表計算ソフトのマクロなど、自動化ツールを含む移行には難航が予想されましたが、生成 AI が非常に有効でした。ソースコードを AI に解析させ、Apps Script への書き換えを支援してもらうことで、移行が進みました。さらに移行作業の中で、業務データやツールの要・不要の見直しを推進したことにより、旧環境時代に 6.5 万個近くあったツール群の約 1 割が廃止、半数は移行は不要となりました。副次的ですが、これも大きな成果の 1 つです。」

現在、データの保管場所についてはほぼ 100% クラウド環境への移行が完了。和氣氏は「当初のプロジェクトの目的であったセキュリティの担保は実現できた」と語ります。一方で、ここに至るまでに、変革に対する心理的・物理的な負担の大きさ故に、社内から厳しい意見が寄せられることも少なくなかったと振り返ります。

「理解を得るために、とにかく、こまめなコミュニケーションと丁寧な説明、そして、Google Workspace によって実現できる世界についてのプロモーションを粘り強く続けました。要望を受けて柔軟に計画を見直すこともありました。当初は厳しいご意見をくださっていた方が、最終的に全社向けの説明会の中で『CoE の意図は理解できた。みんなで協力していきましょう』と、他の従業員に呼びかけてくださる場面に遭遇した時は、『納得して』移行することの大事さを再認識しましたし、想いが伝わり報われたと感じました。」

数日かかっていた作業が数秒で完了、全社に浸透するコラボレーション文化と、生成 AI が拓く未来

2024 年 9 月、Google Workspace への移行完了以降、LIXILの働き方は大きく変化しました。青木氏と和氣氏は、その成果が生産性の向上となって現れはじめていると実感しています。

「特に、BigQuery や AppSheet など、Google Cloud 上のデータが、Google Workspace とシームレスに連携できることが、業務プロセスの改善やデータ分析に基づく意思決定実現に直結していると感じています。例えばある生産現場では、それまで使っていた独自ツールを、スプレッドシートと BigQuery を連携させたツールに作り替えたところ、それまで複数の担当者が介在して 1~2 日かかっていた作業が数秒で終わるようになったと聞いています。」(青木氏)

「セキュリティ面についても、Google の不正メールのフィルタ機能による効果で社内での不審メール報告数が導入前に比べて半減しているという報告もありました。もう以前の環境には戻れないという声も多くいただきます。」(和氣氏)

Google Workspace の利用が確実に浸透していくなか、LIXIL が大きな期待を寄せているのが、Google Workspace に統合された生成 AI、Gemini です。2025 年 7 月、国内従業員向けに利用申請制で先行展開を開始したところ、初日だけで約 1,500 名、その後 1 か月で 12,000 名を超える利用申請がありました。予想をはるかに超えた反響に、「これが多くの人に待ち望まれていた機能であることを実感した」と、青木氏も手応えを得ていました。「アイデアの壁打ちやリサーチには Gemini、チーム内の情報共有や社内 FAQ には NotebookLM」 など、早速、具体的な活用例を社内コミュニティで共有する動きも活発化。経営陣による生成 AI の利用も増え、ボトムアップ、トップダウン両方向から変化が生まれていると言います。

Gemini については、今後、海外拠点にも順次展開される計画で、LIXIL では Google Workspace を中核とした「デジタル ワークプレイス」が、グローバルな組織全体で本格的に整うことになります。ここから生まれる新しい世界への期待について、最後に青木氏が語ってくれました。

「Gemini と NotebookLM は、これからの全従業員の業務に欠かせないツールになると確信しています。短期的には、日々のドキュメント作成やコミュニケーションの効率化といった日常業務で AI 活用を定着させ、中長期的には、より高度な業務プロセスの自動化に適用することで、全社的な業務改革を実践していきたいです。そのためにも、Google Cloud には単なるサービス提供者ではなく、私たちのビジネスを深く理解し、未来を共創する関係であることを強く期待しています。生成 AI を含めた圧倒的な技術力で、私たちのビジネスの可能性の扉を開いてくれる、そんな存在であってほしいですね。これからも、この挑戦的な旅路をともに歩み、成功を分かち合えることを心から楽しみにしています。」


https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/_53A2619_small.max-1800x1800.jpg

株式会社 LIXIL
2011 年にトステムや INAX といった、国内の主要な建材・設備機器メーカー 5 社を統合して設立。以降、GROHE、American Standard といった世界的ブランドを統合し、現在は世界 150 か国以上に 5 万 3,206 名もの従業員(2025 年 3 月時点の連結従業員数)を擁するグローバル企業グループとして、幅広く住環境に関連する事業を展開している。

インタビュイー(写真右から)
・Digital 部門 System Infrastructure 部 Leader 青木 涼 氏
・Digital部門 Global Automation & Operations統括部 和氣 裕子 氏


Google Workspace についてのその他の導入事例はこちらをご覧ください。

投稿先