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顧客事例

ソラスト: Google Workspace と Gemini への移行でナレッジ共有と業務改善、さらには医療・介護・保育業界の DX を目指す

2025年12月18日
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Google Cloud Japan Team

利用しているサービス:
Google Workspace, Google Workspace with Gemini

医療事務、介護サービス、保育サービスを展開する株式会社ソラスト(以下、ソラスト)。同社は 2025 年、現場スタッフを含む 3 万人以上の全職員を対象に Google Workspace への移行を決定しました。そこには、働き方の本質的な改善と、中期経営計画の重点施策でもある、ヘルスケア領域で DX を推進するという目的がありました。導入を主導した担当者 3 名に、移行を決めた背景と期待を伺いました。

既存サービスの更新直後でありながら Google Workspace への移行を決定

ソラストは、1965 年に日本初の医療事務教育機関として創業した、医療事務のパイオニアです。国公立を中心に全国 1,400 以上の医療機関の医療事務を受託し、医療事務関連業務や人材派遣、病院経営支援など幅広いサービスを行っています。2000 年頃からは介護事業に注力し始め、近年は M&A で急速に規模を拡大。東京都を中心に 67 か所の保育園なども運営し、医療事業、介護事業、こども事業を 3 つの柱として展開しています。

ソラストでは、2020 年頃に業務や従業員のコミュニケーションを円滑にするためクラウドサービスを導入。以降、順調に活用が浸透してきましたが、2024 年 12 月、現行のクラウドサービスの契約更新をした直後でありながら、Google Workspace への移行を開始します。同社 取締役 専務執行役員 CIOで IT 戦略本部長の増原 一博氏は、この意図について次のように説明します。

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「2020 年にクラウドサービスは導入できましたが、以前の環境では、個々の知恵や努力に頼る部分が大きく、全社的なナレッジ共有や、さらなる業務の標準化・効率化に課題を感じていました。ライセンス コストも上昇していました。Google Workspace はクラウドが前提で、クラウド上で仕事をして共同編集もできる。みんなで情報を見ながら、共通で使うにはこちらの方がやりやすいと感じました。」

医療・介護の現場では、従業員の入れ替わりが比較的多く、せっかく獲得したナレッジが従業員の離職とともに失われてしまいがちです。業務共通化を切望する背景には、このような問題がありました。また、一部の従業員は、現場の事情から個人のツールを活用して情報の伝達を行うこともありました。これは迅速な現場連携へのニーズに対応するためのものでしたが、セキュリティやガバナンスの観点から全社的な対策が必要でした。Google Workspace はナレッジを蓄積でき、セキュリティがしっかりしていることも移行を後押ししました。

増原氏は Google の理念に共感を覚えたこと、適切なタイミングでソラストの経営陣を巻き込んだことも、スピーディな導入を実現できた要因だったと述べています。

「Chromebook 導入はコスト削減の目的で 検討していましたが、Google Workspace を導入するつもりは最初はあまりありませんでした。ただ、Google のオフィスで実際の使われ方を見る機会があり、機能への理解も深める中で、クラウドでのデータ共有を中心に、経営と現場、さらに Chromebook まで 1 つに繋がるイメージが確立されていきました。最終的には、私たち経営陣が『Google Workspace の導入を進めていこう』という考えに変わっていきました。」

想いとは裏腹になかなか進まなかった業務改革が、Google Workspace 導入という決断を下したことにより、ついに具現化し始めていく。増原氏のコメントからは、そんな手応えがうかがえます。IT 戦略本部 副本部長の小林 信隆氏も、トップダウンで進めてきたことの重要性を強調しました。

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「大きな組織で物事を動かす場合には、トップダウンが非常に有効なこともあります。Google Workspace の導入検証を現場主導で進めていたら、なかなかスムーズには進まなかったかもしれません。現場レベルでの変化に伴う課題もありますが、チームとして力を発揮できる新しい働き方を実現するための、不可欠な一歩だと考えています。」

Google Workspace に統合された Gemini は使いやすく自然に活用へ

Google Workspace の導入決定から利用まで約 1 年間。基盤構築は開始から 3 か月程度で行われました。その後、ライセンスを早い段階でユーザーに展開する一方、移行の混乱を最小限にとどめるため、既存ツールと並行利用できる期間は長く確保されました。

IT 戦略本部 IT インフラアーキテクト部 部長の加藤 勲氏は、実際の導入に当たっても、経営陣の対応が効果的だったと振り返ります。

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「Google Workspace 導入を周知する際には、背景や目的を野田 亨社長の動画メッセージとともに発信することで、全社で取り組む意識付けをしました。社内で先行ユーザーを募って、使い方や考え方の浸透にも協力してもらっています。また、移行期間中に既存ツールとのライセンス重複で発生するコスト増について、経営陣に理解してもらえたことも大きかったです。」

IT 戦略本部など一部の部署では導入を先行しましたが、特に Gemini に可能性を感じていると加藤氏は続けます。

「Google Workspace を使う従業員すべてが Gemini や NotebookLM、Deep Research などの機能を利用できる状況になることで、生産性が大きく向上するのではないかと、強い期待感を持っています。私の場合、システム利用に関する問い合わせ対応において Gemini を活用していますが、会社のポリシーや世の中の動向、製品のセキュリティ機能を総合的に勘案し、迅速に判断を下してくれるので助かっています。マネージャー職は問い合わせ対応から開放されて、本来の業務に集中できるようになると感じています。」

小林氏によれば、移行前のシステムでも生成 AI を利用することはできましたが、活用はあまり進みませんでした。そのため、Google Workspace に移行後、予想以上に多くの事業部門で Gemini や NotebookLM の検討や活用が進んでいることに驚いているといいます。

「Google Workspace では、Gemini がその中の 1 機能に見えるため、どのユーザーもアクセスしやすく、自然と活用が進んだのではないかと考えています。当初は、IT 戦略本部主導で生成 AI の活用を進めていく必要があるかと思っていたので、むしろ私たちの知らないところで自然と活用が始まっていることは、嬉しい驚きでした。今後、どのようにガバナンスを効かせるかという課題に、早速取り組む必要がありそうです。」

事業部門には、まず Google Meet や Google Chat といったコミュニケーション系のツールを導入。過去のシステムや現場に蓄積されたベテラン社員の貴重な経験やナレッジを Google Workspace に集約し、Gemini や NotebookLM を用いて、誰もがその知見を活かせる仕組みを構築していく予定です。これにより、新しい社員や少ない人数でも高品質な業務を提供できるようになり、課題となっていた従業員の入れ替わりによる知識の分断も食い止めることできると、小林氏は考えています。

「先行導入した部門と同じように、現場もクラウド ネイティブで、チームワークで仕事をする形にいかに変えていくかが、このプロジェクトのテーマの 1 つです。長い歴史の中で、現場任せになっていることが非常に多かったので、それを変え、チームとしてコラボレーションできるようにしていくのが、期待でもありミッションでもあります。」

ソラストでは、コスト削減を目的に検討していた Chromebook 約 7,000 台の導入も本格的に進めていく予定で、すでに 2,000 台強の展開を開始しています。

「高いセキュリティ性能を評価して、基本的に社内のパソコンは Chromebook に変えていく考えです。ただし現状では、 Windows アプリケーションの利用が必須となる業務が引き続き存在する点が課題になっています。この点については、ChromeOS デバイス上で Windows アプリを実行するための仮想化ツール Cameyo で解決できそうで、準備をすすめているところです。」

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(医療・介護・保育業界の各現場での DX に挑む)

医療・介護・保育業界全体の DX を進めて「現場が人としっかり接することができるように」

2022 年、ソラストは事業環境の変化と今後 30 年を見据えて企業理念を改定。「人とテクノロジーの融合」を掲げ、DX を軸とした新規ビジネスの創出と既存ビジネスの改革、社会課題解決の貢献と価値あるサービスの提供を打ち出しました。2025 年に公表した中期経営計画では、理念実現のため、今後 5 年間は、人材とテクノロジーに経営資源を重点的に配分することを表明し、病院やクリニックの課題解決に貢献するサービスの提供が事業戦略に示されています。増原氏は、これからはコンサルティングや経営分析といった経営支援にも注力すると説明しました。

「弊社では、数年前から『iisy』というリモート医事サービスを提供しています。また、医療機関向けの Web 学習サービス『terrace studio(テラススタジオ)』、診療報酬算定業務の精度向上、効率化を実現するナレッジアプリ『solabell(ソラベル)』を 2025 年から外販しています。」

ソラベルは病院 DX アワード 2025 優秀賞を受賞。医療従事者投票では 1 位を獲得しています。このほか、医療・介護の現場では、患者さんに対するスタッフの言葉遣いや会話のスピードを測定し、接遇力を高めるトレーニングを行ってきましたが、今回は音声解析の機能を使って、各人の接遇力をスコア化するような仕組みも作りました。小林氏は、これを共通のシステムとして現場に導入する計画についても明かしてくれました。

「接遇力はいろんなところで必要なものだと思いますので、医療業界以外でも、私たちのナレッジが役立つ場所があるのではと考えています。最近広まりつつある AI 面接についても同様です。私たちソラストの長年にわたるノウハウが詰まっていて、より精度の高い支援ができるような取り組みに、Google Workspace の基盤を活用していきたいと思っています。」

ソラストがこの変革を通して目指すのは、人とテクノロジーの融合により「安心して暮らせる地域社会」を支える、という理念の実現です。最後に増原氏は、未来への強いコミットメントを語ってくれました。

「私たちの事業である医療、介護、そして保育の現場はいずれも "人" が中心ですので、しっかり人と接して、人にしかできない業務をしていきたい。しかし、実際は業務の多くを事務作業が占めています。テクノロジーを単なるツールとして導入するのではなく、人の持つ温かいホスピタリティと、クラウドがもたらす革新的な効率性を融合させることに用いれば、現場の負荷を軽減し、真のサービスの質を高めることができると考えています。Google Workspace の導入は、変革のスピードを加速させます。今後はナレッジを集約して、 AI エージェントを使えるかたちにしていく計画です。私たちはこの融合を通じて、すべての人々が安心して暮らせる社会の実現に、これからも大いに貢献していきます。」


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株式会社ソラスト​​
株式会社ソラストは、1965年に日本初の医療事務教育機関として創業。医療機関を支える「医療事務」、ニーズに合わせた「介護サービス」、子どもが自宅同様に安心して過ごせる「保育サービス」を提供し、安心して暮らせる地域社会を支えている。2025年に公表した中期経営計画では、今後5年間、人材とテクノロジーに経営資源を重点的に配分することを表明し、従来の医療事務受託に加え、人材育成やソリューションビジネスにも注力している。

インタビュイー (写真右から)
・取締役 専務執行役員 CIO IT戦略本部長 / 事業開発担当 増原 一博 氏
・IT戦略本部 副本部長 ITソリューション部 部長 / ITディベロップメント部 部長 小林 信隆 氏
・IT戦略本部 ITインフラアーキテクト部 部長 加藤 勲 氏


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