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生産性とコラボレーション

メールはこれからも「使える」媒体か? - Gmail プロダクト リードへのインタビュー

2022年2月15日
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Google Cloud Japan Team

Gmail のプロダクト リードに、チームがどのようにイノベーションを起こし、優れたユーザー エクスペリエンスを提供し続けているのかインタビューしました。

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※この投稿は米国時間 2022 年 2 月 2 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

今年の 4 月で Gmail は 18 年目を迎えます。メールというメディアがちょうど 50 年目を迎えたことを考えると、これは大きな節目であると言えるでしょう。

2004 年に 1 GB の無料ストレージ、会話ベースのグループ化、充実した検索機能を備えてリリースされた Gmail は、瞬く間に世界で最も人気のあるメールサービスの一つになりました。

Paul Buchheit のサイド プロジェクトとして始まったこのプロジェクトは、今では 30 億人以上のユーザーに利用されているソリューションである Google Workspace の一部となっています。

このような成長と Gmail の長い歴史にもかかわらず、Gmail は優れたエクスペリエンス、新しい機能、継続的なイノベーションで、ユーザーの満足度を高める新しい方法を模索し続けています。

プロダクト チームはこれをどのようにして実現しているのでしょう?

この疑問を解決するために、Gmail のプロダクト リードである Matthew Izatt にインタビューしました。

Matthew は、過去 10 年以上にわたって Gmail の構築と成長に携わってきました。Gmail の Android および iOS アプリをビルドするモバイル部門からスタートし、最終的には Gmail のすべてのフロントエンドを担当するリード プロダクト オーナーとなりました。また、2018 年には新しい Gmail の開発を主導し、複数の企業仕様の機能を追加しながら、技術的なアーキテクチャとビジュアル デザインの複雑な再構築を行いました。以来、Workspace プラットフォームとパートナーシップのプロダクト リードとして、100 人以上のチームとともに Google の働き方を再定義する取り組みを主導しています。

以下は、インタビューの内容を編集したものです。

Mustafa Kapadia: 今日はよろしくお願いします。まずは Gmail の新しい機能やエクスペリエンスを構築する際に直面する課題について聞かせてください。それから Matt のチームがどのようにして素晴らしい功績を達成しているのかについて伺いたいと思います。

Matthew Izatt: こちらこそよろしくお願いします。その質問は最初に話すのにぴったりな内容ですね。

最大の課題の一つは、Google Workspace が 30 億人以上のユーザーに利用されているということです。それは素晴らしいことですが、一方でプロダクトの使用方法が無数に存在することを意味します。使い方が一つしかないドアホンとは違います。Gmail の場合は、使い方が無限に広がるスイスアーミー ナイフ(マルチツール ナイフ)のように、一人ひとりに自分のお気に入りの使い方があります。

次に、Gmail は多くのユーザーにとって不可欠なプロダクトです。気楽に楽しく使えるものですが、ユーザーは重要な作業をこなすために Gmail を使います。たとえば仕事の企画書の送信、子供の先生とのメールでのやり取り、診察の予約などです。ですから、何をテストし、何をリリースするのか、慎重にならなければなりません。やみくもにリリースして、どれが機能するかをただ見ているわけにはいかないのです。その前に入念な下調べが必要です。

最後に、常にイノベーションを起こし、既成概念にとらわれない発想をもつ必要があります。メールは古くからあるプロダクトですが、進化を続けています。毎日新しいスタートアップ企業がメールを再発明し、大手企業に挑戦しています。マーケット リーダーであり続けるためには、必ず数年ごとにプロダクトを見直す必要があるのです。だからこそ、新しい Gmail を作るのはとても楽しいことでした。

Mustafa: 私にはとても大変そうに思えます。Gmail は簡単に構築できるプロダクトではありませんね。さて、話を戻しましょう。こうした課題があるなかで、どのようにして素晴らしいエクスペリエンスを構築しているのですか?共有できる例があったら教えてください。

Matt: 具体的な例としていつもご紹介しているのが、どのようにしてスレッドリストの適切な表示間隔を考え出したかについての話です。スレッドリストは受信トレイです。すべてのメッセージがリスト表示されます。表示間隔とは、その情報をどのように表示するかということです。

Gmail では、各メッセージの情報量を増やして、表示するメッセージ数を減らせます。あるいは、各メッセージの情報量を減らして、表示するメッセージ数を増やす選択もできます。

どちらを選ぶかは完全にユーザーの好みです。そして、それが多くのユーザーが Gmail を好んで使う理由の一つでもあるのです。実際、受信トレイの表示設定の機能は、Gmail で最もよく使われる設定のトップ 10 に入ります。

Mustafa: つまり、ユーザーが自分で情報の表示方法を選べるようにしたということですね?

Matt: そのとおりです。ちなみに、もし Gmail チームが 100 種類のオプションを追加していたとしたら、すべてのユーザーがメールフィードを無限にカスタマイズできます。コーディングの視点から見ればこれは可能ですが、実用的ではない理由が 3 つあります。

まず、「無限の選択肢」は机上では聞こえがいいですが、現実には選択肢が多すぎるとユーザーは混乱に陥ります。2 番目に、開発には何か月、もしかしたら 1 年かかるかもしれません。3 番目に、長期的なメンテナンスという悪夢と化すでしょう。

Mustafa: では、実際にはどのように進めていったのですか?Google Workspace の Gmail の内部構造を教えてください。裏話を共有してもらえませんか?

Matt: Google の優秀な UX リサーチチームと密接に協力して、4 つの主要なステップで開発を進めました。

まず、このエクスペリエンスを構築することに意義があるのかどうか、一次調査を行いました。結局のところ、誰も欲しがらない機能があれば構築する意味はないからです。意味があるかどうか調べるために、実際に Google 内外のリアルなユーザーと対話し、ニーズを把握しました。

次に、可能性のある 100 個のソリューションの候補をブレインストーミングし、8 つのオプションに絞り込みました。そして、8 つのオプションのそれぞれのモックアップを作成し、どのように表示されるかを確認しました。

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テキストと画像をさまざまに組み合わせて 8 つのオプションを検討

自分たちが一番気に入ったオプションを選んでそれを構築するのは簡単ですが、自分たちが好きなものではなく、ユーザーが望むものを作りたかったのです。そこで、これらのオプションをもとに、ステップ 1 のユーザーに対して再度アンケートを実施しました。具体的には、「好き」「嫌い」「普通」の 3 段階で好みのランク付けをしてもらいました。

ユーザーの回答によると、3 つの構成が多くのユーザーのニーズを満たすことがわかりました。そこで、私たちは 3 つのオプションを開発し、Google Workspace にデプロイしました。

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ユーザーは 3 つの表示間隔オプション(写真付きの可変ライン、1 行のチップタイプ、最小)が好ましいと回答

Mustafa: 何を構築するかを決めるのにデータを活用したのはとても素晴らしいことだと思います。ユーザーから直接収集したデータを活用することは、まさに Google 独自のノウハウです。

Matt: まさにそのとおりです。フィードバックがなければ、多くのユーザーが満足するオプションを 3 つに絞ることはできなかったでしょう。

Mustafa: リスクについて話をしましょう。構築前にユーザーのフィードバックを得て検証することは、プロダクトのリスクを軽減する一つの方法ですが、プロダクトのリリース戦略においてもリスクを軽減していますよね?

Matt: そうです。機能を個別にリリースすることもあれば、グループとしてリリースすることもあります。このケースでは、いくつもの流動的な要素がありました。UI の完全な再設計、10~12 の新機能の追加、アーキテクチャの変更を行いました。

そこでリスク回避のために、冗談でもなんでもなく、なんと 26 段階ものリリース プロセスを用意しました。まず、ユーザーが気づかないような技術的なアーキテクチャの変更から始め、動作の確認を行いました。そして、少しずつ進めていきました。

その後、いくつかの機能を同時に展開し、まずは登録ユーザーにアップデートのお知らせが配信される早期アクセス プログラムでリリースしました。初めにリアクションと満足度を測定し、次のグループへと移りました。

どの段階でも影響範囲を小さく保ち、リリース、リアクションの測定、その後の戦略の見直しを経て、チェックとバランスを取れるようにしました。今回の大規模なリリースでは、かなりうまくいったと思います。

Mustafa: 同感です!お時間をいただきありがとうございました。Gmail の次バージョンの構築も頑張ってください。

Matt: ありがとうございました。



- 変革およびイノベーション部門グローバル プラクティス リーダー Mustafa Kapadia
- Gmail プロダクト リード Matthew Izatt
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