AI がニューロ インクルーシブに配慮した働き方を支援

Sarah Greenberg
Vice President, Expertise and Behavioral Health Innovation, Understood.org.
Alexander Hauerslev Jensen
Accessibility Program Manager, External Engagement (North America) for Google
※この投稿は米国時間 2026 年 7 月 22 日に、Google Workspace blog に投稿されたものの抄訳です。
多くの人が、仕事中に集中力を維持するのに苦労しています。数十、時には数百ものメール、チャット、テキスト メッセージが日々私たちの注意を引こうとし、カレンダーには絶え間なく会議が詰め込まれていきます。人口の約 20% を占めるニューロダイバージェントの人々にとって、こうした負荷はより強く感じられることがあります。
私たちの脳が情報をどう処理するかは人それぞれですが、専門家が「実行機能」と呼ぶ能力は、誰もが共通して持っています。これは、頭の中にいる「プロジェクト マネージャー」のような存在であり、優先順位を付け、計画を立て、集中し、物事を成し遂げるのを助けてくれるものです。しかし、このプロジェクト マネージャーが処理しきれなくなると、周囲の雑音がさらに大きく感じられ、作業を進めることが一気に難しくなります。
Understood.org は、ADHD や失読症など、脳の特性に合わない世界で生きる個人やその子どもたちを支援している組織です。学校や職場にとどまらず、生活のあらゆる場面でこうした人々が力を発揮できるようサポートしており、エキスパート主導のツールやリソース、膨大なコンテンツ ライブラリ、グローバルなポッドキャスト ネットワークなどを活用して、毎年 2,000 万人以上の人々にサービスを提供しています。最近では Google のチームと連携し、私たちの働く環境ですでに利用されている AI ツール(Google Workspace with Gemini など)が、実行機能の課題を乗り越え、仕事の質を高め、職場での成功を妨げる障壁を減らし、よりニューロ インクルーシブな働き方を実現するうえで、どのように役立つかを調査しました。以下に、その主なポイントをいくつかご紹介します。ニューロダイバーシティを推進する効果的な働き方に関するガイドの全文は、こちらからダウンロードできます。
実行機能の課題を理解する
私たちは皆、実行機能の課題に直面することがあります。優先順位の管理、集中力の維持、タスクの整理などに苦労することは誰にでも起こり得ますが、より継続的に困難を感じる人もいます。頭の中の「プロジェクト マネージャー」の能力が目標達成の妨げになる可能性があるのです。実行機能の課題は、一般的な知能とは関係ありません。非常に知能が高い人でも、仕事を時間どおりに完了するのに苦労することはよくあります。著名な心理学者であり、著作家、そして Understood.org で長年にわたってエキスパートを務めている Thomas E. Brown 博士は、実行機能の課題を理解するためのフレームワークを考案しました。このモデルは、ADHD に焦点を当てたものですが、多くの人々が日々の仕事生活に関連性を見出せる内容となっており、実行機能を以下のカテゴリに分類しています。
- 行動の開始: 仕事を整理して優先順位を付け、やる気が湧かないときでもタスクに着手する。
- 集中力: タスクに注意を向け続け、必要に応じて焦点を切り替え、気を散らす要素を排除する。
- 努力: 覚醒状態を調整し、努力を持続させ、処理速度を保つ。
- 記憶: 情報を頭の中に保持して活用すること(作業記憶)と、必要な時に以前に記憶した情報にアクセスすること(想起)。
- 行動: 自分の行動をモニタリングし、衝動的な発言や行動を抑えて、進め方を調整する。
- 感情: 苛立ち、不安、失望などの感情を管理して、仕事に支障をきたさないようにする。
AI ツールは、実行機能に課題を抱える人々にとって、状況を一変させるきっかけとなり得ます。以下では、AI が実行機能をどのようにサポートできるかについて概説するとともに、この実現に役立つ Google Workspace with Gemini の具体的な機能について紹介します。
行動を開始するきっかけを作る
白紙のままの文書を前にして 1 時間何も進まなかった経験があるなら、それは、行動を開始するまでに至らない「遅れ」を体験したということです。これは、タスクを開始するために必要な精神的なエネルギーであり、AI は、こうした最初の下書きやアウトラインを生成するのに非常に役立ちます。
Google Workspace では、Google ドキュメントの自動化作成サポートを使用することで、最初の下書きを作成できます。プロジェクトに関連するファイルに基づいて作成することも可能です。また、同僚と打ち合わせする時間を見つけるのに苦労している場合は、Gemini in Google カレンダーがスケジュール アシスタントとして機能します。自分で時間枠を調整する代わりに、「今週のチーム ミーティングの後、Jan と Boris と 1 時間打ち合わせをしたい」と伝えるだけで、Gemini が空き時間を探してくれます。


集中力を維持する
多くの人にとって、この課題は始めることだけではなく、軌道に乗った状態を維持することでもあります。AI の進化により、一人で作業している時も会議の時も、カレンダーの管理機能を活用して集中力を維持できるようになりました。
たとえば、Google カレンダーでサイレント モードを利用すると、Google Chat の通知が自動的にミュートされ、気が散るのを防ぐことができます。また、話を聞きながらメモを取るのが難しい場合は、Google Meet の自動メモ生成機能を使用すれば、Gemini が詳細を記録してくれるため、会話に集中できます。会議後には、要約やアクション アイテムが記載された整理済みのメモが、すべての参加者にメールで送信されます。
コンテキストの切り替えも、集中力を奪う要因の一つです。プロジェクトや会話を切り替える場合は、Google Chat の Gemini サイドパネルで「このスレッドの最新のメッセージを教えて」と指示することで、過去のメッセージをスクロールして確認する必要がなくなります。
自分自身のエネルギーを管理する
精神的なエネルギーの管理は、バッテリーの管理に似ています。タスクによっては、他のタスクよりも早くエネルギーを消耗するものもあります。そのような場合は、AI を活用して面倒な作業を「オフロード」することで、重要なアイデアや深い思考のためにエネルギーを温存することができます。
たとえば、長いメールスレッドや複雑なドキュメントを要約するために、Gemini in Workspace に「最も重要なポイントを 3 つ教えて」のように指示できます。また、音声や映像などの多様な形式が好まれる場合や、複数のモダリティを組み合わせることで理解が深まる場合もよくあります。Gemini Notebook などのツールを使用すれば、ブログ、調査報告書、プレゼンテーションといった一連の情報源を、ポッドキャスト、マインドマップ、インフォグラフィックなどに変換できます。
作業記憶をサポートする
作業記憶は、情報を一時的に保持して活用するための仕組みです。作業記憶に過度に負荷がかかると、細かい情報の欠落が生じますが、AI はこれを補完することができます。
たとえば、会議では、Gemini が字幕を表示したり、文字起こしを生成したりすることで、より多くの情報を保持できるようになります。これにより、聞き逃したことがあれば後から確認できます。また、Google ドライブの AI を活用した検索機能により、作業中のプロジェクトの正確なファイル名を覚えておく必要もなくなりました。たとえば、Gemini in Google ドライブに「緑色のグラフが入った先月の予算のスプレッドシートを探して」と依頼するだけで目的のファイルを見つけることができます。タイトルを覚えておく必要はありません。コンテキストさえ分かっていれば十分です。
意図を持ってコミュニケーションを取り、行動する
職場の空気を読むことや、暗黙知を理解することは、時に大きなストレスになります。メールのトーンが意図どおりに伝わっているか、会議で生産的に発言できているかなどの確認のために助けが必要になることもあります。
Gemini は「トーンチェック」の役割を果たし、メッセージが意図したとおりに確実に相手に伝わるようサポートします。重要なメールを送信する前に「これはプロフェッショナルで建設的に聞こえる?」や「このプロジェクトの遅延を前向きに聞こえるようにリーダーに伝えるには、どう表現すればいい?」と Gemini に尋ねることができます。また、送信後に後悔した経験がある方は、一呼吸置いて考え直す時間を確保するために、Gmail の設定で送信を 30 秒遅らせるように調整することもできます。会議では、Google Meet の挙手機能を使用することで、発言したいという意思を自然に示せます。これにより、全員の声が自然に流れる場を保ち、「話を遮ってしまう」というストレスを感じることなく会話に参加できます。
ニューロダイバーシティを推進する効果的な働き方に関するガイドには、他にも多くのヒントが掲載されています。
より良い職場環境を、すべての人々に
ニューロ インクルーシブな職場づくりは、ニューロダイバージェントを自認する従業員を支援するだけでなく、すべての従業員やチームが、最高の仕事をするための障壁を減らすことにもつながります。社会にとっての学び方や考え方の多様性は、地球にとっての生物多様性と同じくらい重要です。私たちには、異なる考え方を持つチームメンバーが必要です。AI は、一人ひとりの神経特性に合わせて仕事のやり方をパーソナライズするのに役立ちます。これは小さいながらも有意義な方法であり、時間の経過とともにやがて大きな変化をもたらします。職場文化全体が多様性を受け入れることで、誰もが恩恵を得られるのです。
- Understood.org、専門領域および行動医療イノベーション担当バイス プレジデント、Sarah Greenberg 氏
- Google、アクセシビリティ プログラム マネージャー(北米地域、外部エンゲージメント担当)、Alexander Hauerslev Jensen



