秋田県:Chrome Enterprise とともに実現を目指す、人に優しい DX

Google Cloud Japan Team
世界遺産・白神山地など豊かな自然に恵まれた秋田県。一方、同県は全国で最も速いペースで少子高齢化と人口減少が進む「課題先進県」であり、それに伴う将来的な行政サービスの担い手不足という課題に直面しています。この状況を打破し、県民サービスの質を向上させるため、同県は ChromeOS と Chromebook、Chrome Enterprise Premium、Google Workspace の導入を決定。その結果、場所にとらわれない柔軟な働き方を実現しただけでなく、若手職員が主役となる新しい組織文化も生まれつつあります。DX で「人に優しい」行政を目指す秋田県の秋田県知事、そして現場の担当者たちに話を伺いました。
利用しているサービス:
ChromeOS、Chromebook、Chrome Enterprise Upgrade、Chrome Enterprise Premium、Google Workspace
災害対応で従来環境の限界を痛感
人口減少と高齢化が進み、「課題先進県」と言われる秋田県ですが、行政サービスの最前線を担う県庁では、Google のテクノロジーを武器に劇的な変革を遂げつつあります。そのビジョンについて、秋田県知事 鈴木 健太氏は、県が置かれた現状と DX の本質を次のように語ります。


「民間企業の DX が遅れている秋田県において、まずは 5,000 名規模の県庁が先導役となり、地域全体のデジタル化を牽引する必要があります。秋田県は高齢化が進んでいるからこそ、テクノロジーの力が必要です。しかし、それはデジタル一辺倒になるということではありません。私が常々思っているのは、『人に優しいテクノロジーであってほしい』ということです。」
知事が掲げる理想に対し、かつての現場は対照的な状況にありました。秋田県庁では、一般職員および会計年度任用職員など、約 5,000 名の職員を擁し、広大な県土の行政サービスを担っていますが、内部では、積み重ねられてきた旧来の業務環境が、職員の自由な働き方を阻んでいました。デジタル政策推進課 情報基盤・システム管理チーム 主査 伊藤 隼人氏は、当時の状況を「モビリティの欠如」と表現します。


「以前の庁内環境は、デスクトップ PC が自席に固定された状態でした。そのため、会議や相談では紙の資料を持参するのが当たり前。会議中、次回の予定を確認するにも席に戻るしかありませんでした。その場で決断できないことで、スピード感が完全に損なわれていたのです。」
セキュリティ対策として自治体に求められる「三層分離」のネットワーク構成も、利便性とはトレードオフの関係にありました。特に課題だったのが、コロナ禍で需要が高まったウェブ会議への対応です。当時は共用のウェブ会議用端末の利用には煩雑な手続きが必要だったと、同課 調整・DX推進チーム 主査 佐藤 大輔氏は振り返ります。


「ウェブ会議用端末は、3 営業日前までに貸し出し申請を行う必要がありました。そのうえ、端末の受取・返却という物理的な移動も発生します。私自身、年間 200 件近い会議を主催していましたが、そのたびに発生するタスク管理だけで疲弊し、職員間では『面倒だから対面でいい』という空気が蔓延していました。ウェブ会議は『今すぐ話したい』ニーズに応えるツールなのに、これでは本末転倒です。」
誰一人取り残さない、人に優しい DX を
潮目が変わったのは、2023 年 7 月。県内を襲った記録的な大雨災害でした。県は当時、業務改革の足掛かりとしてテスト導入中だった数十台の Chromebook を急遽、災害対応の最前線に投入。刻一刻と変わる被害状況の迅速な報告・共有に大きく貢献したことで、県庁内ではテレワーク環境の重要性を改めて痛感することとなりました。
「安全かつ迅速に、どこからでも業務ができる環境整備は、平時の効率化だけでなく、災害時の BCP(事業継続計画)の観点からも待ったなしの課題でした。私たちが目指したのは、単なるツールの入れ替えではなく、職員を場所と時間の制約から解放し、本来やるべき『県民のための仕事』に集中できる環境を作ること。人口減少が進む秋田県だからこそ、職員の意識と働き方を根本から変える必要があったのです。」
しかし、理想とする環境は一朝一夕に実現したわけではありません。当初、庁内システムへのアクセス手段は画面転送方式に限られていたため、動作にラグが発生し、Chromebook 単体では操作性は不完全でした。また、ファイル共有やウェブ会議といったグループウェア機能が欠け、ポテンシャルを活かしきれていませんでした。その壁を突破し、秋田県の DX をさらなるステップへと進めたのが、ChromeOS、Google Workspace の全庁導入と、Chrome Enterprise Premium によるゼロトラスト セキュリティ強化でした。これによって、Chrome ブラウザそのものを強力なセキュリティの盾にし、情報漏えいのリスクを最小化することもできたと佐藤氏は振り返ります。
「Chromebook は 280 台をテレワーク用端末として導入、全庁の各課に配布し利用しています。さらに、Chrome Enterprise Premiumを導入することにより、Google Workspace で行う業務を、ブラウザ上でセキュアかつシームレスに行える環境を実現しました。Google Workspace の全庁導入にあたっては、業務フローが変わることへの不安から庁内で懸念の声もあがりましたが、全職員の約 3 分の 1 を巻き込んだ実証実験を実施。チャットの即時性や共同編集の利便性を肌で感じてもらうことで、徐々に『これは便利だ』『働き方が変わる』という納得感を広げ、着実な合意形成へとつなげていきました。」
数ある選択肢の中で、なぜ Google のソリューションだったのか。鈴木知事は、秋田県が置かれた現状も踏まえ、必然性をこう語ります。
「Google のサービスが徹底して『シンプルであり、本質的である』点にあります。日本の組織は得てして機能過多で複雑なシステムを構築しがちですが、Google のツールは直感的で、余計な迷いを生じさせません。高齢化が進む秋田県において、デジタル格差を生まず、誰一人取り残さないためには、この圧倒的な使いやすさこそが命綱となります。高度な技術を誰もが自然に享受できる『人に優しい DX』を実現するために、Google が選択されました。」
組織文化のポジティブな変化を追い風に、課題"解決"先進県へ
ChromeOS の導入は、秋田県庁に大きな変化をもたらしています。最も分かりやすい成果は、ウェブ会議にかかるリードタイムの短縮です。同課 情報基盤・システム管理チーム 主事 髙橋 柊太氏は、その成果を説明します。


「ウェブ会議のための端末貸し出し申請にかかっていた『3 営業日』という時間は、『0 日』になり、意思決定のスピードが格段に向上しました。その即時性を支えているのが、Google のオフィスを参考に導入した『Grab and Go』の仕組みです。これは、デジタル政策推進課内のポートに設置した Chromebook を、予約不要で貸し出すというもの。『急にウェブ会議が入った』『出張者が一時的に使いたい』といった場合に、棚から端末を取り、個人の ID でログインするだけでいつもの作業環境がすぐに整います。手続きの煩雑さもなく、稼働率は常に 5 割を超えています。」
災害時の情報共有スピードも劇的に向上しました。以前は現場写真を庁舎に持ち帰って取り込んでいましたが、現在は現場からスマートフォンで Google ドライブにアップロードするだけで共有が完了します。災害対策本部ではリアルタイムで現地の状況を把握し、迅速な意思決定ができるようになりました。県民の生命と財産を守るうえで、極めて重要な進歩です。
鈴木知事は、ペーパーレス化の効果について次のように強調します。「かつては分厚い紙資料が必須だった議会対応や事前のレクチャーも、今ではすべてデータで行うようになり、資料の修正や差し替えに伴う再印刷の手間も消滅。年間で膨大な時間とコストが削減されています。また、外出先でもスマートフォンや Chromebook で資料を確認できるので、予習や準備の質が上がり、働き方の変化を実感しています。」
こうした変化は、単なるツールの普及にとどまらず、組織文化そのものにも大きな変革をもたらしている、と鈴木知事は続けます。
「Google のソリューションの普及係として各部署に配置した若手有志のエバンジェリストたちによって、従来の年功序列的な空気が薄れ始めています。操作・活用の方法だけでなく、『電話で相手の時間を奪わない』のような現代的な運用ルールの感覚を若手が積極的に広めてくれるんです。デジタルに強い若手が教える側になることで、上司側も素直に教えを乞うようになり、以前よりもお互いに意見が言いやすい、風通しの良い職場になりつつあります。」
ポジティブな変化を受けて、秋田県は今後 Gemini の本格活用とゼロトラスト セキュリティへの移行、そして、それらのノウハウを地域へ波及していくことを目標に掲げています。佐藤氏は、「今後は議事録作成やデータ分析、資料作成の自動化をさらに推し進めていきます。定型業務を Gemini に任せることで生まれた時間を、県民との対話や複雑な政策課題の解決に充てていきたい」と意気込みます。
最後に、鈴木知事は秋田県が目指す未来について、次のように締めくくりました。


「デジタルの力で業務を効率化し、そこで生まれた余力を、人にしかできない温かみのあるサービスに注ぐ。Google のソリューションは、そんな理想を実現するための強力なパートナーです。私たちはこれからも失敗を恐れずに新しい技術に挑戦し、課題先進県から課題"解決"先進県へと変貌を遂げていきます。」


秋田県
日本海側の交通の要衝、そして日本有数の米どころとして発展し、豊かな森林資源や鉱山資源にも恵まれた秋田県は、日本の近代化を資源・エネルギー面から支えてきました。現在は人口約 88 万人が暮らす、美酒と食の宝庫としても知られています。日本一の深さを誇る田沢湖や、国指定重要無形民俗文化財「秋田竿燈まつり」など、四季折々の雄大な自然と伝統文化が共存する美しい景観が特徴です。人口減少と高齢化が進む中、秋田県は ChromeOS をはじめとする Google のソリューションの導入を進め、「人に優しいテクノロジー」の実装を通じて、新たな自治体モデルの構築に挑んでいます。
インタビュイー
秋田県庁
- 秋田県知事 鈴木健太 氏
- 企画振興部 デジタル政策推進課 情報基盤・システム管理チーム 主査 伊藤 隼人 氏
- 企画振興部 デジタル政策推進課 情報基盤・システム管理チーム 主事 髙橋 柊太 氏
- 企画振興部 デジタル政策推進課 調整・DX推進チーム 主査 佐藤 大輔 氏



