コンテンツに移動
顧客事例

船井総研グループ: 社内の 97% が Gemini を活用、AI でコンサルティング業務の価値を最大化

2025年8月20日
https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/hero_image_funai_horizontal.max-2500x2500.jpg
Google Cloud Japan Team

9 社の事業会社から構成される船井総研グループは、中堅・中小企業向けのコンサルティングを主軸に事業を展開。DX、AI 活用、IPO、M&A など、多岐にわたるテーマで顧客企業の成長を支援しています。その一方で、多様なフォーマットのデータ整備や、提案資料への落とし込み業務の効率化が課題となっていました。同社は、この課題を解決しつつ、コンサルティング業務自体の革新を図るべく、Google Workspace with Gemini を導入。プロジェクトの経緯とユースケース、そして効果について、それぞれの担当者に聞きました。

利用しているサービス:
Google Workspace with Gemini

分析のための準備作業からの解放、Google Workspace とシームレスに連携する Gemini で業務を効率化

中堅・中小企業を中心に、「デジタル」と「経営」を掛け合わせた総合コンサルティングを提供する船井総研グループ。2009 年には Google Workspace(旧名称 Google Apps)を導入するなど、社内 DX にも積極的に取り組んできました。しかし、その業務の最前線では、顧客企業のアナログな情報管理が大きな課題となっていました。同社のコーポレートストラテジー部 兼 DX推進室 シニアマネージャーの石田 朝希氏は、当時の状況をこう振り返ります。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/DSC04149final_small.max-1200x1200.jpg

「特に深刻だったのは、コンサルティング業務の核となる情報管理と分析です。私たちの主なお客さまである中小企業では、手書きの図面や PDF の決算書、マーケティング用の紙のアンケートなど、分析に必須かつ有効な情報資料がアナログで残されていることが少なくありません。これらの情報のデータ化はすべてコンサルタント自身が手作業で行っており、時間と手間の面で大きな負担となっていました。分析のためのデータ整備はとても大切な業務ですが、コンサルタントが本来注力すべきは、そこから導き出す『提案』です。私たちは、この本質的な業務に集中できる環境を早急に整える必要があると強く感じていました。」

そこで同社が白羽の矢を立てたのが、日本語対応が発表されたばかりの Google Workspace with Gemini でした。石田氏は、採用の理由を次のように語ります。

「1 番の決め手は、Gmail、Google ドライブ、Google Meet、Google Chat といった頻繁に利用しているアプリケーションとの連携が容易である点です。Google Workspace では、アプリケーションから直接 Gemini を起動することもでき、UI もスムーズです。2 つ目は、お客さまの決算書やアンケートといった機密情報を安全に扱うことができる堅牢なセキュリティです。 Google Workspace のセキュリティ ポリシー内で AI を活用できる安心感は、導入の決定を強く後押ししました。」

さらに、同社の顧客層の中心を占める中堅・中小企業のユーザーにとって使いやすいことも重要だった、と石田氏は続けます。

「実は、私たちのお客さまの多くが、コスト負担の軽い Gmail やスプレッドシートを日常業務で利用しています。私たちがまず Gemini を使いこなし、その具体的な活用法を提示する。それが使い慣れたツールの延長線上であれば、お客さまも無理なく DX・AI 活用に取り組むことができます。Gemini であることが、お客さまの心理的なハードルを下げる鍵になると考えたのです。」

わずか 4 か月で導入完了。業務を革新するさまざまなユースケース

Gemini の導入プロジェクトは、検討開始からわずか 4 か月で完了。短期間かつ効率的な導入の成功は、段階的なプロセスの工夫にあった、と石田氏は説明します。

「まず、社内で生成 AI 活用に積極的な 50 名を選抜し、先行トライアルを開始しました。1 か月後には対象を 150 名まで拡大。その後は、あえて AI リテラシーが高くない層も巻き込みながら対象を徐々に拡げ、実践的な検証を進めていきました。全社導入完了後は、部署別の説明会、社長を含む全社員が参加するユースケース発表会やコンテスト、トップユーザーによる AI 活用紹介、ワークショップなど、利用を促進するための施策を次々と実行していきました。特にユースケース発表会は、実際に業務で Gemini を活用している社員が具体的な成功事例を共有することで、他の社員の導入障壁を下げ、利用意欲を高めることに貢献したと感じています。」

こうして、導入後短期間で蓄積された多くのユースケースの中から、社内でも特に評価を集めた 2 つの事例について、担当者に聞きました。

【ユースケース 1】製造業向け現場システム+原価管理アプリ

製造業のコンサルティングを手掛ける DX支援本部 DXコンサルティング部 リーダーの熊谷 俊作氏は、担当する顧客現場での原価管理に課題を感じていました。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/DSC04185final_small.max-1200x1200.jpg

「中小企業の製造業の現場では、作業実績が手書き管理されている、もしくは管理そのものがされていないケースが多く見られます。実工数が曖昧なので、そこから算出されるべき労務費(製造工数 × 工賃)には実態との乖離が生まれます。正確な労務費が把握できなければ、原価管理が曖昧になり、利益を正しく把握することもできません。つまり、利益を増やしたいお客さまに適切な改善提案をするには、製品ごとの原価や利益を正しく把握する=実工数を正しく把握することが重要なのです。これまでは、日報など手書きの作業記録から、必要な情報を人手で表計算ソフトに入力・集計していましたが、分析に至るまでのデータ化に多大な時間を要しており、そもそも客観的な工数の正確性も十分ではない状況でした。」

そこで、熊谷氏が開発したのが、現場の作業員がタブレットで作業時間を記録できるアプリです。作業員がタブレットから作業の開始 / 終了ボタンを押すだけで、作業工程ごとの時間(工数)がデータで保存されるしくみです。熊谷氏は、Gemini を活用することでスピーディーな開発を実現させました。

「アプリに必要な仕様をテキストで記載し、Gemini に読み込ませて、プログラミング コードを生成しました。Gemini を活用することで、専門のエンジニアでなくても、お客さまごとの細かな要望に対応したアプリを短時間で構築、カスタマイズすることが可能になりました。」

開発されたアプリは、顧客の製造現場で実際に使用されていますが、当初は、「タブレット入力が二度手間になる」「管理されるようで嫌だ」という声もあったといいます。このような声に対しては、現場であがった要望を、リアルタイムに取り込んで修正提示を繰り返すことで、徐々に理解を得ていったと、熊谷氏は語ります。

「お客さまの工場に朝から晩まで張り付き、実際にアプリが使われている様子や頻度を見回ったこともありました。なぜ使ってもらえないのか、どこが使いづらいのか、作業員一人ひとりにヒアリングを重ね、不安や懸念に隠れている要望を見つけ出していきました。見つけた要望は、その場で Gemini に伝え、生成されたコードを即座にアプリに反映させます。従来であれば、多くの関係者の手を借りて数か月かかるような開発が、その場で実現できる。この体験は、現場の抵抗感を徐々に解消し、経営層や工場長からは、リアルタイムでのデータ可視化が可能になったことに、大きな評価をいただくまでになりました。」

さらに顧客にアプリが浸透していくに伴い、熊谷氏自身の業務にも変化が生まれます。

「Gemini を活用することでアプリのリアルタイムの開発・改修が可能になったことにより、本来の業務である ”その先の生産性向上のための支援” に、より集中することができるようになりました。また、お客さまのアプリ利用により、原価管理に必要なデータが手元にある状態から支援を始められるので、今までと比較して、よりデータに基づいた改善提案をすることができているという実感があります。お客さまと対話する時間も増え、双方合意のもと結果を得やすい、コンサルティングしやすい環境を作ることができたのもメリットだと感じています。」

現在、熊谷氏が担当する顧客の 8 割がこのアプリを活用しており、今後は社内製造業チーム全体での普及を目指しています。熊谷氏は「圧倒的なスピード感が、コンサルティングの価値を根底から変えていく」と大きな手応えを感じています。

【ユースケース 2】 NotebookLM と Gemini で実現する「ナレッジの民主化」

独自の開発言語を伴うビジネス アプリケーションの開発支援を、NotebookLM を活用して実現するのは、DXエンジニアリンググループ シニアエキスパートの太田 純氏です。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/DSC04217final_small.max-1200x1200.jpg

「私が担当するビジネス アプリケーションは、アプリ独自の言語を使用しています。開発者の数そのものが少なく、ネット上にも情報が少ないため、高度な技術対応が特定の担当者に依存しているという課題を抱えていました。また、経験の浅い担当者からの質問が経験豊かな上位者に集中し、そのサポートのために上位者が作業に集中できないという悪循環が生まれていたのです。そこで、社内で開発されたスクリプトをはじめ、公式リリース情報や、ネット上の関連情報を NotebookLM に集約し、担当者が誰でもすぐにアクセス可能なナレッジベースを構築することを思いつきました。」

しかし、多様なソースから集めた情報は書式がバラバラで、単に NotebookLM に集約し学習させるだけでは、期待した精度で結果を得ることができませんでした。そこで、太田氏は、Gemini を活用し改善を図ります。

「まず Gemini を使って、各情報を AI が読みやすい形式に整形・フォーマットしてから NotebookLM に読み込ませます。この “前処理” により、ナレッジベースは安定的に稼働するようになりました。サンプルコードの取得に加え、スクリプトの自動生成の精度も劇的に向上しました。ユーザーにも好評で、新人にとっては学習ハードルが大幅に下がり、経験者にとっては、これまで 1 日がかりで行っていたスクリプト作成が 5〜10 分にまで短縮できるケースもあるなど、時間短縮にも効果を発揮しています。」

個々の作業効率の向上は、チームのコミュニケーションのあり方にも、質的な変化をもたらした、と太田氏は感じています。

「経験の浅い担当者から上位者への質問の質が大きく変化しました。以前の漠然とした相談から、Gemini が作ったコードを元にレビューを依頼するなど、具体的・かつ高度な技術質問に変化したことで、チーム内のコミュニケーション コストも大幅に減少しています。ナレッジの共有が、間違いなくチーム全体の生産性を飛躍的に向上させていますが、Gemini と NotebookLM がなければ、ここまで簡単に、また短期間で実現はできなかったでしょう。」

開発支援のナレッジベースは、部内での利用から始まり、顧客支援プロジェクトやソースコードのリファクタリングにも拡大。対応アプリケーションの拡充や、顧客ごとの個別環境要素を取り入れたスクリプトの自動生成など、さらなる機能強化が進められています。太田氏の視線は、ツールの利用普及にとどまらず、プロジェクト成功の先にある AI 活用の未来に向けられています。

「ナレッジベースの構想に着手した当時は、社内にはまだ、Gemini や NotebookLM などの AI 活用事例が十分にはありませんでした。エンジニアという身近な立場の具体的な活用事例を実現できれば、全社的な AI 活用の活性化につなげられる。このプロジェクトは、そんな思いで進めてきましたが、すでに、チームの業務のありかたを大きく変えています。将来的には、Google Agentspace のような複数の AI エージェントが自律的に連携して業務を遂行する世界を見据えて、Google Cloud 上で独自の AI エージェント開発もスタートさせました。Google Cloud とは、この後も共に連携して成功事例を生み出していけることを期待しています。」

AI が変えるコンサルティングの未来

「2 つのユースケースが象徴するように、Gemini の活用によって船井総研グループのコンサルティングのあり方そのものが大きく変わろうとしている」と、石田氏はその導入がもたらした変化を力強く語ります。

「最も顕著な効果は、生成 AI が業務に当たり前に利用され、次から次へと新たな活用事例が日々生まれてきている点です。これまで大きな負担となっていた “分析のための準備作業” から解放され、コンサルタントが提案作成や顧客との対話といった、より付加価値の高い本質的な業務に集中できるようにもなりました。この変化は、リアルタイムなデータに基づく改善策提案や経営上の迅速な判断、あるいは、データが可視化されることでの経営課題の早期発見など、直接・間接的に顧客満足度の向上にもつながっています。」

こうした成功体験は社内に共有され、同社での Gemini の利用率は、97% にまで達しています。「業界柄、新しいものや技術の導入に積極的な文化だと思いますが、一過性のブームで終わらず Gemini の利用が定着していることには正直驚いています」。石田氏はこう前置きしたうえで、Gemini を推進力に切り拓こうとしている未来について語ってくれました。

「今、1 番注目しているのは『AI エージェント』です。社内外に散在するあらゆる情報源から、AI が自律的にデータを収集・分析し、お客さまの課題に即した提案書のドラフトを自動生成する。そんな世界が実現できれば、コンサルタントは、より一層、創造的で本質的な価値提供に集中できます。Gemini の導入を通じて、私たちの AI 活用は “当たり前” のレベルまで進化しました。この経験と AI の力を最大限に生かして、私たちが関わった日本の中堅・中小企業が世界的な競争力を持つ会社へと成長していける環境を創出することに、これからも鋭意取り組んでいきたいと考えています。」


https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/DSC04236final_small.max-1500x1500.jpg

株式会社船井総研ホールディングス(船井総研グループ)
船井総研グループは、中堅・中小企業の各種経営課題(売上高拡大、新規事業開発、出店戦略など)の解決を支援するコンサルティング企業グループです。特に中堅・中小企業向けコンサルティング分野においては、業界トップクラスの収益性と高い資本効率を誇るリーディングカンパニーです。

インタビュイー(写真左から)
・船井総研ホールディングス
 コーポレートストラテジー部 兼 DX推進室 シニアマネージャー 石田 朝希 氏
・船井総合研究所
 DX支援本部 DXコンサルティング部 リーダー 熊谷 俊作 氏
・船井総合研究所
 DXエンジニアリンググループ シニアエキスパート 太田 純 氏


Google Workspace についてのその他の導入事例はこちらをご覧ください。

投稿先