ローム: Google Workspace with Gemini の導入で、半導体開発のスピードと品質の大幅な向上、全社的な DX を追求

Google Cloud Japan Team
日本を代表する半導体・電子部品メーカー、ローム株式会社(以下、ローム)。同社では品質向上と業務効率化を目的に、全社的に DX を推進してきました。近年はその一環として生成 AI の活用にも取り組み、Google Workspace with Gemini を導入。設計業務やナレッジ活用、リサーチ、新規企画の壁打ちなど、幅広い領域での活用が広がっています。同社で AI 活用を牽引する担当者とエンジニアに、Gemini 導入の理由と効果、今後のビジョンについて伺いました。
利用しているサービス:
Google Workspace with Gemini
利用しているソリューション:
生成 AI
半導体ビジネスの最前線を走るメーカーが直面した生成 AI 活用の壁
AI やデータセンターの需要、自動車の電動化を背景に、半導体産業は今、かつてない需要拡大期を迎えています。ロームは 1958 年の設立以来、さまざまな顧客の用途に応じた製品を開発。アナログからデジタルの LSI(大規模集積回路)、パワー半導体まで幅広く手がけ、日本の産業界を支えてきました。同社は企業目的として「品質第一」を掲げ、品質の向上と業務効率化のため、全社的に DX を推進。近年はその延長線上で、生成 AI の活用も模索しています。同社の IT 統括本部 IT 企画部でグループ リーダーを務める宮本 あずさ氏は、そのきっかけをこう語ります。


「生成 AI 導入の動きが始まったのは、2024 年の初め頃です。社員がプライベートで使用しており、業務でも使わせてほしいという要望が上がっていたのです。ただし、どの業務で利用できるかはわかりませんでしたし、まずは何かしらの生成 AI を導入しよう、という感じでスタートしました。」
最初に導入されたのは、従来から使っているグループウェアと親和性のある AI アシスタントでした。これはセキュアな環境の担保、一般的な情報収集や議事録作成などでは有効でしたが、LSI の設計や開発、特許情報の検索など、専門的かつ大規模なデータを扱う業務への適応ではあまり効果が出なかったため、より精度の高い生成 AI が必要だという見方をする人が徐々に増加。LSI 開発本部の技術主査、小野 克幸氏も、その一人でした。
「私も世間的な関心が高まったころから、すぐ業務に取り入れていく必要があると感じていました。ただし、グループウェアの AI モデルを使用するのにも時間がかかりそうだったので、個人的に生成 AI を構築し、ローカル環境で社内のデータベースの検索やクエリ作成を自動化することを試みていました。とはいえ、業務効率化のために時間を奪われるのは本末転倒ですから、高性能な生成 AI が導入されるのを待っていましたね。」
LSI 開発本部の課長である谷光 耕平氏は、個人的に生成 AI を使用。ポテンシャルの高さを早い段階から認識していました。


「私の課は主に IC(集積回路)の設計を担当していますが、扱う情報量がとても多いんです。自社や他社の仕様書は膨大で、新しい技術が来るたびに増えていきます。また EDA(Electronic Design Automation)ツールという、IC の設計に使うツールのドキュメントも数千ページあるため、情報の整理や検索が負担になっていました。プライベートでは、プログラミングや技術的なキャッチアップなどに Gemini を個人的に契約して使っていましたので、会社でも使えるようにならないかなと願っていました。」
Gemini の活用で、1 年がかりのコード改善プロジェクトを 1 週間で完了
このような状況を大きく変えたのが、Gemini のトライアル プログラムです。当初、ロームでは、AI アシスタントを追加で導入する予定はありませんでした。しかし、Google Cloud の営業担当者による提案を受けて、2025 年 5 月に Google Workspace with Gemini の試用がスタート。全部門から 500 名がトライアルに申し込むなど、大きな注目を集めます。小野氏は谷光氏とともに、勉強会で講師役を務めるなど普及の牽引役を果たしましたが、最も評価されたのは、やはり性能の高さでした。


「私自身、知り合いの部門長にお勧めしたのですが、その方も『今までの生成 AI とは、出力のレベルが違う』と感心し、部下全員に参加を申し込ませていました。トライアルでは、1 年かけて実施する予定だったコード解析・改善プロジェクトが、1 週間で完了したという事例も報告されました。Gemini の解析能力と生成能力は、それだけ優れているのですが、あまりに社内での評価が高くなったので、生成 AI の利用に関する注意点をまとめた文書を作って、渡したほどです。」
トライアルを管轄した宮本氏も、似たような手応えを感じていたといいます。
「反響の大きさは予想以上でした。例えば 10 年かけて集めたノウハウが一晩で手に入った、優秀な部下がいるのと同じ効果がある、もう手放せない、といった声が各部署から出てきました。また『今まで断っていた業務も、生成 AI でやってみようと思えるようになった』など、仕事に取り組む姿勢そのものが変わったという声もありました。アンケートをとったところ、1 人あたり月 31 時間の作業短縮を見込めることもわかりました。これは従来の AI アシスタントがもたらしていた短縮効果(月 4 時間)の約 8 倍にあたりますので、単純に驚きでした。」
大きな反響を受け、トライアルから 4 か月後には、Google Workspace with Gemini の正式導入が決定します。宮本氏はほぼ 1 人で導入業務を担当し、社内のセキュリティ部門やインフラ部門との調整役も務めることになりましたが、その際には Google Cloud のサポートチームが支えになったと振り返ります。
「弊社の場合、Google Cloud のツールに関してのノウハウがほとんどない状態からの環境構築だったので、最初は不安もありました。でもサポートチームの方々が、システムやインフラの相談から、社内向けの説明資料作成、勉強会の準備まで、あらゆることを手伝ってくれたからこそ、スムーズな導入が実現したのだと思います。」


トライアル中のレビューでは、Google Cloud の Gemini、Deep Research、NotebookLM がいずれも満足度評価で最高点を獲得(ローム株式会社提供)
開発スピードと品質の向上、全社的な DX を図るために活用を推進
今やロームでは、「なんでも Gemini」というコミュニティが立ち上がるなど、部署の垣根を越えて知見を共有する文化も醸成。900 名以上の社内ユーザーが、Gemini を利用するようになりました。
これに伴い利用方法も拡大。もともとトライアルの時点から、社内 DWH(データ ウェアハウス)の検索、シミュレーション時のバグ発見などに活用されてきましたが、クエリ作成の自動化、技術仕様書の検索と確認、コード生成などにも活用されるようになりました。特に LSI 開発部門では、企画時の市場調査から、設計時の壁打ちやドキュメント生成、検証・評価のチェックにいたるまで、全工程で活用が進んでいます。マーケティング部門でも、リサーチや企画の壁打ちなどでの利用が進み、着実な成果を上げています。
「基礎性能や使いやすさはもちろん、信頼性の面でも Gemini は群を抜いている」と語る谷光氏は、より巨視的な観点から、Gemini がもたらす効果を説明します。
「ロームという会社が社会の役に立つためには、開発スピードをもっと速くしなければいけませんが、同時に責任のある製品も提供しなければいけない。ましてや半導体の開発では、ひとつの失敗が数か月、ときには年レベルでの遅れにつながりますので、それを避けるには、シミュレーションの段階でバグを見つけることが重要です。この点で Gemini は、まるでシニア技術者のような正確さで問題点を指摘してくれます。本格的な活用はまだこれからですが、我々の業務を後押ししてくれる存在として正しい使い方をすれば、相当な効果が生まれると思います。」


小野氏は情報の横断的な共有と活用が、次の目標になると語ります。
「弊社は企業目的として『品質』を重視していますので、今まで培ってきたナレッジを集約し、品質向上を図るうえでも役に立つのではないかと考えています。むろん、その場合には、ナレッジ自体を構造化データに変換したうえで、検索性の高いデータベースを構築し、埋め込み型や自律型のエージェントとして使うことも予想されます。弊社には多種多様なフォーマットの情報が膨大にありますが、マルチモーダルでロング コンテクストに対応した Gemini を使えば、情報の有効活用が進むはずです。」
2026 年からは「AI 戦略」が策定され、全社的な取り組みもスタート。宮本氏は半導体製造の新たな可能性を切り拓くべく、さらなる Gemini の活用に強い意欲を見せていました。
「現在はマーケティングや研究開発でも、本部内利用者の半数以上がライセンスを持っています。また、データ化が進んでいた部署では、NotebookLM などの利用による効率化も図られるようになりました。ただし今は個人の業務効率化が中心ですので、もう一段上のレイヤーの業務改善に、生成 AI を使っていければいいなと考えています。営業部門であれば、お客様からのお問い合わせへの対応や商談、拡販活動。製造部門であれば、歩留まりの向上や、リードタイムの削減、社内で培ってきたナレッジのデータベース化など、より大きな仕組みの改善のために Gemini を活用していきたいです。」


ローム 株式会社
1958 年に京都で設立された、日本を代表する半導体・電子部品メーカー。自動車・産業機器のほか、民生・通信など多様な市場に対し、グローバルに展開している開発・営業ネットワークを通じて、品質と信頼性に優れた LSI やディスクリート、電子部品を供給。パワー分野とアナログ分野では、SiCをはじめとするパワーデバイスや駆動 IC、またトランジスタ、ダイオード、抵抗器等の周辺部品を含め、システム全体を最適化するソリューション提案を強みとしている。
インタビュイー
・IT 統括本部 グループリーダー 宮本 あずさ 氏
・LSI 開発本部 課長 谷光 耕平 氏
・LSI 開発本部 技術主査 小野 克幸 氏
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