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顧客事例

札幌市: Google Workspace を全庁導入、16,000 ユーザーがフルクラウドで市民サービス向上と地域活性化、業務効率化を加速

2025年6月19日
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Google Cloud Japan Team

人口約 196 万人を擁し、横浜市、大阪市、名古屋市に次いで国内 4 番目(※)の人口規模を誇る政令指定都市。そんな北海道札幌市(以下、札幌市)にとっても、人口減少社会への対応は喫緊の課題であり、地方自治体のあり方にも変革が迫られています。同市はクラウド化を柱とした戦略的なデジタル改革を本格始動。その核となるのが、政令指定都市では初の Google Workspace の「全庁導入」です。札幌市は Google Workspace の導入でどのように変わろうとしているのか。大規模導入の背景と目指す姿、今後の展望について、プロジェクトを推進するキーパーソンたちに話を伺いました。

※ 2025 年 3 月時点 人口統計による

利用しているサービス:
Google Workspace

より良い行政サービスを提供するための DX、クラウド化決断の背景

都道府県で最大の面積を誇る北の大地、北海道。その政治、経済、文化の中心地として栄える札幌市は、北海道全体の人口の約 3 割が集中する政令指定都市です。近年進めてきた デジタル化や働き方改革をさらに発展・加速させるための核となるコラボレーション ツールとして、同市は 2025 年 5 月、庁内 16,000 ユーザーに向けた Google Workspace の全庁的な運用を開始しました。この大規模な導入の背景にある同市の ICT 戦略について、札幌市 デジタル戦略推進局 情報システム部長の小澤 秀弘氏は次のように話します。

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「政府が 2021 年 11 月に打ち出した『デジタル田園都市国家構想』を受けて、2022 年、私たちはクラウド化を前提とした『札幌市 DX 推進計画』を策定しました。『デジタル田園都市国家構想』とは、デジタルの力を活用して地方創生を進めることで『全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会』の実現を目指すというものですが、現場レベルではイメージしづらく、具体的計画を示せている自治体はまだ少ないのが実情です。一つ明確なことは、「技術」で「距離」や「時間」を埋めていく、ということ。これを私たち札幌市の計画にうまく落とし込んでいこうと考えました。実際、多くの自治体に先駆けて独自の DX 推進計画を形にできたことは、札幌市にとって大きな意味を持ったと感じています。どうすれば市民の皆様に、より便利と思ってもらえる行政サービスが実現できるか、どうすればコロナ禍のような不測の事態で止まらない市役所でいられるか、そして職員一人ひとりが前向きに働ける場所にできるか。これらを模索し、検討を進めてきた先の現在の選択として、このたびの Google Workspace の導入があったのです。」

一方、札幌市 デジタル戦略推進局 情報システム部 システム調整課長 北本 剛氏は、システム的な観点でも、クラウドへの機運の高まりが後押ししたと加えます。

「『デジタル田園都市国家構想』以前も、私たちなりの業務改革を進めていました。しかし、いわゆる近代型のネットワークの上に、必要なツールやモバイル環境などを積み木のように重ねては拡張していた状態で、ここにきてどうもしっくりこない、手間がかかるという感覚がありました。職員が携わる業務がどんどん多様化する中で、この先のデジタル環境の拡張性に限界を感じていたのです。時期を同じくして、総務省の『自治体情報セキュリティ対策の見直し(三層の対策)』の中で、セキュリティが確保されればインターネット領域での業務運用も許容される方針が示されました。これを受けて、私たちの中でも、今まで制限されていたインターネット環境の活用、すなわちクラウドを活用した働き方への機運が高まってきていました。」

さらに、重大な情報資産の流出を起こさないためのセキュリティの高さも必要だと語るのは、同部 システム調整課 内部システム担当係長の坪谷 賢一氏です。

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「自治体として重視するのは、やはりセキュリティです。私たちの扱うデータには、市民の個人情報や、行政サービスを遂行するための重要な情報が多く含まれています。従来のファイルベースの働き方では、どうしてもランサムウェアによる情報流出や消失のリスクが高くなります。重要なデータは守りつつ事業継続性を担保するには、フルクラウドは必要条件だと考えています。ゼロトラストの考え方は、セキュリティ面はもちろん、コスト面のメリットも大きいことも判明し、Google Workspace 導入の最後の後押しとなりました。」

単なるツールの導入ではなく、職員の意識変革を促す

これら複合的な流れから、本格的な変革にアクセルを踏んだ札幌市。では、同市が Google Workspace を伴って目指そうとしている働き方とは、どのようなものでしょうか。本プロジェクトを現場でリードする坪谷氏は、クラウドを活用した業務効率化の第一歩を具体的にイメージしています。

「まずは、情報共有の文化を根付かせたいと考えています。私が情報システム部で先行して Google Workspace に触れて最も印象的だったのは、1 対 1 ではなく、グループでコミュニケーションしやすいツールだということ。札幌市では 2022 年度に別のグループウェアを導入し、新しい働き方への改革を目指していました。しかし、ローカル環境でも作業が可能なツールでは、多くの職員がローカル環境で作業し、メール添付の情報共有という慣れた方法を継続する結果となっていました。ファイルの共有や Web 会議などの主要な機能の利用率も全体の 2 割程度にとどまり、働き方改革推進への行き詰まりを感じていました。フルクラウドの Google Workspace では、そもそも、ローカル環境で作業をすることそのものを想定していません。まさにこれが、私たち札幌市が目指していた改革を後押ししてくれるのではと感じました。

全庁導入にあたっては、具体的に、庁内のコミュニケーションにはメールではなく Chat を推奨、それも、個人間ではなく必要なメンバーを同胞したグループ(スペース)上でのやり取りを促します。また、ファイルは最初からドライブ上に置いて、全員で共同編集することでより良いものに仕上げていく文化を定着させたいと考えています。」

情報システム部では、これを実現する一つの方策として「NEWSネットを活用した 札幌市の新しい働き方ガイド」(NEWSネット: 札幌市で新たに運用を始めたインターネット接続系業務ネットワークの呼称で、NEWS は NEW Work Style の略称)の策定を進めています。その項目は、「ファイルはローカルではなく、ドライブに保存する」「庁内の会議で資料参照する場合は、わざわざ PDF に変換しなくてもよい」など、変化を促すための細かく具体的な内容にも及んでいます。同部 システム調整課 内部システム担当係の高棹 大輔氏は、職員の意識改革を促したいという意図があると強調します。

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「インターネットにつながっていない従来の閉じた環境での働き方と、クラウドを軸とした環境下での働き方は大きく異なります。環境が大きく変わることには、誰しもが抵抗を覚えるものです。私たちは、Google Workspace の導入を単なるプロセスの変化ではなく、考え方を刷新するチャンスだと捉えています。しかしながら、新たなツールを導入しただけでは大きくは変わらないということも、今までの取り組みの中で学んできました。このガイドラインは、札幌市が目指す働き方を具体的に示して共有し、それぞれの現場が『自分ごと』としてとらえてくれるようなものにしたい。職員たちも、それぞれの立場と日々の業務の中で何かしら課題感を抱えているはずですが、このガイドラインを見て一歩踏み出すことで、自分たちでも変えていけるよ、と理解してもらえるようにしたかったのです。」

テスト運用で見えた効果と可能性

大規模な全庁導入に先駆けて、一部の部署を対象としたテスト導入も実施しました。情報システム部のほか、総務局、スマートシティ推進部、政策立案の担当部署、財政部など、新しい働き方の効果を実感してほしいとセレクトした部門を中心に、200 人規模での Google Workspace の先行利用が進められてきました。

実際にツールを使う過程では、具体的なメリットも見え始めています。

「異なるアプリケーションをいくつも立ち上げる必要がなく、ブラウザ(タブの切り替え)のみで複数の機能をつかった作業ができるところは、無駄がなく気に入っています」と、坪谷氏はフルクラウドのインターフェースのシンプルさを評価します。

情報システム部 システム調整課 内部システム担当係の伊丹 菜夕寧氏も、「まだお試し運用の段階ではありますが、改善要望などが積極的に寄せられているのはいい兆しです」とその反響に前向きです。

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「私は、入庁後情報システム部が初めての配属先ですが、札幌市役所はそれなりに大きな組織で、業務で別の部署に行くと、まるで別の会社に来たような感覚になることもあります。Google Workspace を利用することで、他部署との会話や情報共有がしやすくなるように変えていきたいです。また、多くの承認ステップを経ることが必要な業務の場合なども、早い段階から承認者たちと資料を共有して意見やアドバイスを受ることができれば、無駄な手戻りもなくすことができます。結果的に質の高いものを作ることにもつながると思うのです。」

高棹氏は、生成 AI Gemini の機能にも期待を寄せています。

「Gemini を活用できるのは大きな魅力です。煩雑になりがちな業務マニュアルを整理・要約したり、過去の情報を元に新しいマニュアルを作成したりすることで、業務の標準化や効率的な引き継ぎに貢献できると考えています。Google Workspace の中には、NoteboookLM など、いろいろなソリューションが標準装備されているので、使い方が広がりそうです。」

Google Workspace 全庁導入の先に見据えるもの、持続的で魅力的な札幌市へ

札幌市の Google Workspace の大規模導入にあたっては、日本情報通信株式会社(以下、NI+C)が技術的なサポートを行っています。坪谷氏は、「やりたいことはすべて伝えていて、一緒に業務の実態に踏み込んで考えてくれています」と、そのサポートに信頼を寄せます。

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本件の技術支援を担当した NI+C データ&アナリティクス事業本部 クラウドインテグレーション部の 2 名は、次のように語っています。

「1 年半近くの時間をかけ、一緒に導入をご支援してきた中で、改革を進めるんだという強い思いを感じてきました。本格的な全庁導入後も、テスト運用で得られた知見をもとに、クラウドの利点を最大限に活用できるような使い方の提案を続けてまいります。」(NI+C データ&アナリティクス事業本部 クラウドインテグレーション部 部長 内田 達宏氏)

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「『ユーザー視点を重視すること』を常に求められてきたと感じていますし、これが大規模な導入を成功に導く鍵となると痛感しています。技術的なポイントを、いかにわかりやすくかみ砕き、伝え、浸透を促せるか、これまで以上にチャレンジを続けていきたいと思います。」(NI+C データ&アナリティクス事業本部 クラウドインテグレーション部 第一グループ長 松本 然氏)

札幌市の Google Workspace 導入の成果が表れてくるのはこれからです。坪谷氏は、単なるシステム刷新にとどまらず、政令指定都市として持続的な発展に必要な組織文化変革への大きな一歩となりうるのだと、意欲をのぞかせます。

「今回の Google Workspace の導入は、各部門の下支えとして、革新が起きやすい環境を整備したということにすぎません。今後の運用一つひとつを評価し見直しを繰り返しながら、市民サービスの満足度向上にもつなげていきたいと考えています。私たちは、まだ私たちが思い至っていないような使い方、ノウハウについてのアドバイスを必要としています。Google Cloud には、ぜひ継続的な連携をお願いしたいですね。これからは、相手の情報や時間をただ奪うのではなく、自分が与える立場になっていく。生成 AI も積極的に活用して、札幌市からイノベーションを起こしていきたいです。」

最後に、北本氏は、市民のための未来を見据えてこう締めくくりました。

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「思い切ってやってみなければ、現状を変え、未来への活路を切り開いていくことはできません。変化を決断するときには『覚悟』が必要です。クラウドを活用していくことは、組織内の業務効率化のみならず、地域社会と一体となった情報の共有や利活用を推進する呼び水にもなります。私たちが真剣に考えるべきは、この街と市民の未来のこと。Google Workspace の本格導入でもたらされる市役所の業務や職員の意識の変化が、ひいては、市民の暮らし、持続的で魅力的な札幌市づくりにつながっていくことを期待しています。」


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札幌市役所
1869 年(明治 2 年)、北海道開拓の拠点として計画的な都市整備が始まって以降、北海道の政治・経済・文化の中心地として発展を続け、現在では人口約 196 万人が暮らす政令指定都市に成長。都市と自然が調和した環境が特徴で、毎年国内外から 200 万人以上が訪れる冬の一大イベント「さっぽろ雪まつり」は有名。2024 年グーグル・クラウド・ジャパン合同会社と「デジタル改革における戦略的提携」に合意。両者で、札幌市における「人口減少社会において、誰もが安心して利便性を実感し、真に市民生活の質の向上につながる市民目線によるデジタル改革」の実現を目指している。

日本情報通信株式会社
(Google Cloud パートナー)
日本情報通信(NI+C)は、1985 年に日本電信電話(NTT)と日本アイ・ビー・エム によって設立されたシステム インテグレーター。Google Cloud プレミア パートナーとして「インフラストラクチャ - サービス」や「アプリケーション開発 - サービス」でのスペシャライゼーション認定のもと、クラウド ネイティブ な開発を行い、データを活用したシステム環境や、よりセキュアな Google Workspace 環境を提供している。

インタビュイー
札幌市
デジタル戦略推進局 情報システム部
・部長 小澤 秀弘 氏
・システム調整課長 北本 剛 氏
・システム調整課 内部システム担当係長 坪谷 賢一 氏(写真中央)
・システム調整課 内部システム担当係 高棹 大輔 氏(写真右)
・システム調整課 内部システム担当係 伊丹 菜夕寧 氏(写真右から 2 人目)

日本情報通信株式会社
データ&アナリティクス事業本部 クラウドインテグレーション部
・部長 内田 達宏 氏(写真左から2人目)
・第一グループ長 松本 然 氏(写真左)


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