AI がもたらす人間の未来と、コラボレーションによるさらにスマートな編集作業
The Google Workspace Team
※この投稿は米国時間 2024 年 11 月 15 日に、Google Workspace blog に投稿されたものの抄訳です。
Vivienne Ming 博士は、理論神経科学者、起業家、作家であり、2 児の母でもあります。AI 分野における彼女の発明は、教育、労働力、健康といった人間の可能性に焦点を当てた多くの企業や非営利団体の立ち上げに貢献しています。長年にわたり Google ドキュメントのようなツールにおけるコラボレーションの力と集合知のエバンジェリストとして活動している Ming 博士に、AI を取り巻く環境と「分散型イノベーション」に対する見解をお聞きしました。
Q: 博士は以前のインタビューでご自身のことを AI スノッブと呼んでいました。これはどういう意味ですか?
私が AI スノッブ、つまり AI 崇拝者であるのは、自分のモデルが実際に何をしているかを数学的に理解することへのこだわりからきています。ほとんどの人にとって、ほとんどの場合、スライド資料の広告コピーや画像生成に組み込みの AI 機能を使用できれば間違いなく十分です。しかし、私が The Human Trust で取り組んでいる仕事では、自分のモデルがなぜ、どのように機能するのかを知る必要があります。息子が糖尿病と診断されたとき、私は彼の血糖値を追跡するために、おそらく史上初の糖尿病向け ML を構築しました。また、なぜその予測がなされたのかを知る必要がありました。私は孤児難民とその親類を再会させるために顔認識 AI を開発しましたが、これもまた顔認知の心理学だけでなく、モデルの深い理解が必要でした。私がスノッブなのは、自分で構築したかどうかに関係なく、AI の限界と可能性を知りたいからです。人々の教育、仕事、命までもが私たちの取り組みにかかっているのですから、スノッブになる価値はあります。
Q: AI(生成 AI かどうかを問わず)に関して、博士が最も期待していることは何ですか?その未来を人間らしいものにするには何が必要ですか?
最新の AI に最も期待している能力が 2 つあります。1 つ目は、私たちの向上のために課題を与える能力です。私は 20 年にわたり AI と教育の分野で仕事をしてきましたが、最も一貫した知見の一つが、AI のチューターで生徒に答えを教えても、生徒は何も学ばないということです。私たちの取り組みでは、LLM、強化学習、ディープ エンベディングを組み合わせた高度なモデルによって、生徒に答えを教える代わりに、積極的に課題を与えることで学習者を支援する手法を調査しています。私たちはこの手法を「生産的摩擦」と呼んでいます。
2 つ目は、ややこしい人間の現実を構成する、信じられないほど複雑で相互依存的な要素を統合できる LLM の能力です。たとえば、The Human Trust では、自殺ホットラインを支援する AI エージェントを開発しています。このエージェントもまた、多種多様な基盤モデルが組み合わされており、特定の発信者の経験を対象とする戦術や役に立つアドバイスを自殺防止ワーカーに提供します。平均的な生徒や、危機的状況にある平均的な発信者など、平均的な人間というものは存在しません。最新の AI でようやくこの深遠な真実を尊重できるようになったのです。
Vivienne Ming 博士の週刊ニュースレター(socos.org)の特集記事
Q: AI は、私たちがより良い共同編集者となり、よりスマートで革新的なチームを作るのに役立ちますか?
パンデミックの最中、仕事のすべてがビデオ会議と共同編集可能なドキュメントを通して進められていた頃、私は世界有数の大企業のチーム内でのやり取りを分析しました。その結果、最もスマートなチームは小規模で多様性に富み、フラットであることがわかりました。重要なのは、多様性とフラットな階層は相互に必要である点です。多様なチームは新しいアイデアをより多く生み出しますが、それは個々のチームメンバーが平等に貢献した場合に限られます。こうした分析情報をもとに Matchmaker AI を構築しました。このシステムは、ネットワーク内のコミュニケーションを分析し、新しいつながりを動的に作り、既存のつながりをブロックして、集合知を最大化します。Matchmaker が生み出す新たなソーシャル ネットワークでは、ネットワーク全体のイノベーションの生産性を 2 倍にできることがわかりました。
Q: 数年前、Google は成功するチームの特徴を理解するため、プロジェクト アリストテレスを実施しました。その結果、信頼性、仕組みと明確さ、意義、影響力、心理的安全性が重要であることがわかりました。集合知に関する博士の取り組みは、これらの結果とどのように合致しますか?
Matchmaker の構築にあたり、同じような要素に気付きました。特に、信頼と多様性の間には大きな緊張関係があり、グループ内でバランスを取る必要がありました。多様性が低すぎると、新しいアイデアも出なくなります(実際、非常に均質的なチームは、メンバー個人より「間抜け」であることがありました)。一方、信頼が低すぎる(心理的安全性と誠実さが低い)と、多様性の高いチームの個人は貢献することをやめてしまいます。
Q: 博士は長年にわたり、Google Workspace をはじめとする Google プロダクトをご利用くださっています(とても嬉しいお話です)。Google ドキュメントなどのツールには、「コラボレーション ファースト」アプローチで作業を進めるという、Google の信念が反映されています。Google は、早い段階から頻繁に他のユーザーと作業を共有しています。プロジェクトに取り組む際、ドキュメントのコメントや非同期の共同編集をどのように活用されていますか?
共同編集可能なドキュメントは、共同編集を行うチームで共有されるインテリジェンスです。そこには、個々のメンバーの個人的な貢献だけでなく、その共同編集における多大な努力から得られたインテリジェンスが表れます。チャットやメッセージのやり取りは、一時的かつ連続的なものであるため、集合知が持つ大きな力はありません。個人的には、特定のドキュメント内で、そのドキュメントが変更された「理由」について非同期のディスカッションのコメントを活用すると同時に、有益でないメモをドキュメントから取り除くようにしています。こうすることで、分散型共同編集の妨げとなり得る混乱や誤解がなくなります。ドキュメントのすべてはコンテンツであり、コメントのすべてはアクションであるべきです。
-Google Workspace チーム