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AI と機械学習

環境問題に対峙する元エンジニアの取り組みを Google Workspace と AI が支援

2023年12月14日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2023 年 12 月 6 日に、Google Workspace blog に投稿されたものの抄訳です。

編集者注: この投稿は、LinkedIn ニュースレター「AI@Work with Google Workspace: human perspectives on the new era of work with Duet AI and beyond(新しい時代の働き方に関する人間の視点、Duet AI とその先へ)」にも掲載されています。ご購読はこちらからお申し込みいただけます。


食品廃棄物はよく、世界で最も愚かな環境問題と言われます。なぜでしょう。世界には全人口の 4 倍以上を養えるだけのカロリーがあるにもかかわらず、10 人に 1 人が食べ物を満足に得られていないからです。

元ハードウェア エンジニアの Emily Ma は、その専門知識を Project Delta で発揮し、現在は Google で食料廃棄と食料不足の解決に取り組んでいます。2020 年より、彼女はフードバンクや国際的な非営利団体、そして飢餓と闘うボランティアとして時間を割く何百人もの Google 社員とともに活動しています。

入社当時、彼女は食品廃棄について理解を深めるために、Google のキャンパスで行われた食品監査に参加し、人々が何を捨てているのかを調べました。彼女と少人数のチームで建物内のゴミ袋をすべて回収し、決められた場所へ運んだ後、ひとつずつ分別したのです。その後、彼女のチームは AI を活用したコンピュータ ビジョン アルゴリズムを開発しました。このアルゴリズムは、ゴミの中からパターンを見つけ出し、その残り物のご飯は捨てる代わりにチャーハンやライス プディングの材料として使えるかもしれない、といった分析情報を生成します。

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Project Delta の食品の識別および分類システムのプロトタイプは、ML を使ってさまざまな種類の食品を自動的に識別します。上の画像の各色はグレープフルーツとレタスを識別しています。

2014 年以来、Google Food は、Emily とチームの分析情報を踏まえて 1,000 万ポンド(4,500 トン以上)分の食品廃棄物を減らしてきました。これは、25,000 トン分の炭素排出と 10 億ガロン(約 37 億リットル)以上の水に相当します。Google のすべてのオフィスに 5 年間水を供給するのに十分な量です。この取り組みは、2025 年までにキャンパス内のすべての食品廃棄物を埋め立てゴミにしないようにするという、Google の意欲的な計画の一環です。

必要とする人々により多くの食料を届けるために、人とデータを結び付ける

自身の取り組みを発展させるため、Emily は Google のキャンパス外までミッションを拡大しました。農家からトラックの運転手、フードバンクに至るまで、食品を生産、流通、再分配している人々に話を聞くことにより、Emily とそのチームは、食品廃棄と食料不安を解決するにあたっての最大の障壁のひとつがデータサイロであることを明らかにしました。

「フロリダのオレンジ生産者から 20 マイル離れた場所の食料品店に余剰のオレンジがあり、寄付したいと考えたとき、テキサスのフードバンクと連携できるかもしれません。これまで、食品の流れについてデータを共有したり、ましてやコミュニケーションを取ったりする標準的な方法はありませんでした」と Emily は言います。

食品関連組織が互いのデータを理解しやすくするため、Emily のチームは Google Cloud の BigQuery プラットフォーム上で構築したインテリジェントな食品流通システムを開発しました。このツールは、寄付された食品のエントリをすべて分類し、Feeding America のネットワークに登録されているフードバンクのニーズとリアルタイムで照合します。また、米国最大級の食料品小売業者である Kroger の余った食品や総菜を引き受け、必要とするコミュニティに数百万食以上の食事を提供しています。

AI を活用したテクノロジーを導入できるようフードバンクを支援

Emily は、The Global Foodbanking Network を通じて、世界中の何百ものフードバンクによる Google Workspace の導入を支援してきました。ミッションを実現するには多くのボランティアの力が欠かせないため、フードバンクには、アクセスしやすく、直感的で、すぐに使いこなせるテクノロジーが必要です。

Elijah Amoo Addo 氏が 2015 年に Food for All Africa を設立したとき、最初に利用したのは Google ドキュメントでした。「フードバンクの申込書がどのようなものかは知りませんでしたが、ドキュメントのテンプレートを使ってすぐに作ることができました。現在では、現地で撮影した写真から、チャリティで提供するすべての食事をトラッキングするスプレッドシートまで、ロジスティクス業務全体を Meet、ドキュメント、スプレッドシート、ドライブで管理しています。」Workspace を業務全体で活用することにより、Food for All Africa は現在、毎日 25,000 人以上の受益者にサービスを提供しています。

Workspace の Duet AI が組織のミッションにどう役立つかを尋ねたところ、Addo 氏は次のように答えました。「資金を増やすために資金提供者宛てのメールや助成金の申請書を書いたり、受益組織のためにプレゼンテーションをまとめたりするなど、生成 AI で運営方法をどのように改善できるかについて探っていく予定です。Workspace は、アフリカの飢餓を解決するという私たちのミッションに不可欠な存在であり続けるでしょう。」

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Food for All Africa のために食料物資を届ける準備をするボランティアたち

コロンビア全土の 24 のフードバンクを結び付け、毎日数千人の児童に食事を提供している非営利団体 ABACO も、ミッションの一環として AI を取り入れる予定です。ABACO の国際協力マネージャーである Norma Fernanda Alonso 氏は、次のように話しています。「将来的に AI は重要になると考えています。私たちはすでにバーチャル リアリティを利用して、フードバンクを訪れることができない潜在的な資金提供者に、受益者がどのような暮らしをしていて、何を必要としているのかを伝えています。AI は、バーチャル リアリティと同じように、私たちが人々を結び付け、ミッションの実現を迅速化するのを助けてくれます。」ABACO はまた、60 か国以上で対象となる団体に無償で提供されている Google Workspace for Nonprofits を利用しているため、Alonso 氏とチームはその節約分を、コミュニティに提供する食事の追加に充てています。

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ABACO の食品倉庫施設内の様子

ABACO と同様に、ウルグアイの Banco de Alimentos も、社会組織と学校、教会、刑務所などの受益者との大規模なネットワークにサービスを提供しています。Banco de Alimentos は主にバーチャル フードバンクとして運営され、195 の組織からの出荷物を調整し、1 年間で 50,000 人以上にそれを届けています。Banco de Alimento のディレクター、Dolores Battro 氏は次のように話しています。「私たちはスプレッドシートを利用しています。1 つのマスター スプレッドシートが業務における頭脳のような役割を果たしています。このスプレッドシートを使って、誰に食品を送ったか、次は誰に届けるべきかをトラッキングしています。すべてクラウド上にあるため、私のスマートフォンや資金提供者とミーティング中のノートパソコンからでも簡単にアクセスできます。」

Battro 氏は、AI によるミッションの支援について、次のように語っています。「もし AI が、受益者との面会から得たデータやフィードバックに基づいて、次の出荷先を最適かつ公正に提案できれば、それは私たちにとって大きなブレークスルーとなるでしょう。」

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Banco de Alimentos から寄付を受けている学校のための給食の準備

生成 AI で飢餓をなくす

生成 AI が食品廃棄や食料不足の解決にどのように役立つかという質問に、Emily は次のように答えています。「食べ物は私たち一人ひとりにとって非常に個人的なものです。また、私たちが何者で、どのような状況にあるかにかかわらず、すべての人にきちんとした食事を摂る権利があります。生成 AI はここで役に立ちます。Google のシェフによる余剰食材の再利用を支援する ML アルゴリズムが、サハラ砂漠以南のアフリカのフードバンクが回収した食料を最大限に活用するためにも役立つとしたらどうでしょう?生成 AI は、今ある食料を最大限に活用する力を解き放ちます。一世代でポリオをなくすことができたなら、飢餓をなくすことも可能だと、私は信じています。」

- Google Workspace チーム
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