コンテンツに移動
顧客事例

足利市: 自治体で初めて LGWAN 端末からローカル ブレイクアウトによる Google Workspace への接続を実現

2024年7月26日
https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/hero_image_ashikagashi_horizontal.max-2500x2500.jpg
Google Cloud Japan Team

足利市では、自治体情報セキュリティ対策として三層分離モデル(α モデル)を採用しています。α モデルは、強固な情報セキュリティ対策が可能な一方で、在宅勤務やテレワーク、ウェブ会議などの実現が困難という課題がありました。そこで足利市では、オンプレミスで運用してきた庁内システムの更新に合わせ、一部システムのクラウド化を決定。ローカル ブレイクアウトによる Google Workspace への接続を自治体で初めて採用しています。このプロジェクトについて、足利市のデジタル戦略課のご担当者と、Google Workspace の導入からトレーニングまでをサポートした旧 株式会社トップゲート(現 株式会社G-gen、以下、G-gen)のご担当者に話を伺いました。

利用しているサービス:
Google Workspace, Google Apps Script, AppSheet

高い操作性やセキュリティ、将来的な BYOD を見据えて Google Workspace を採用

足利市では、2022 年度から 2029 年度までを計画期間とする「第 8 次足利市行政改革大綱」に基づき、「デジタル戦略」を基本方針の 1 つとして、持続可能な行財政運営、および市民の視点に立った質の高い行政サービスの提供に取り組んでいます。具体的には、どこでも行政手続きができるオンライン申請システムの導入や、市民が書類などを書く負担を軽減する書かない窓口サービスの開始、利用者の利便性向上やキャッシュレスに対応した公共施設管理予約システムの更新、産学官連携による教育 DX などを推進。さらに 2021 年度末より、オンプレミスで運用してきた庁内の情報系・インターネット系システム機器の刷新もスタートしています。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/small_ABE5416.max-2000x2000.jpg

もともと行政経営部 デジタル戦略課で「デジタル戦略」の指揮を執っていた 教育委員会事務局 学校教育課教育研究所教育 DX 担当 主幹の菅谷 正隆氏は、「東日本大震災の教訓でもありますが、市庁舎が建ってから長年が経過し、オンプレミスでシステムを運用していたため、災害や震災時にシステムが止まってしまうリスクが課題でした。基幹システムは市民サービスに直結することから 2014 年にクラウド化を実施しましたが、情報系・インターネット系システムに関してはセキュリティなどの関係上、クラウド化していませんでした。また導入からかなりの年数が経過したため、維持管理コストが増大していたことから、コスト削減も解決すべき課題の 1 つでした」と話します。そこで採用されたのが、ビジネスアプリとコミュニケーション ツールが 1 つに集約された Google Workspace でした。

「2023 年 3 月から本格的に検討をはじめ、この期間に Google Cloud と G-gen の担当者からさまざまな提案をいただきました。 Google Workspace はシンプルでわかりやすく、既存のビジネスソフトと同じ感覚で操作ができます。作ったファイルもそのまま利用でき、Gmail や Google カレンダー、Google ドライブなど、すでに個人で利用していて操作に慣れている職員が多く、ビジネスアプリとコミュニケーション ツールを別々に導入する必要がないのでコストメリットも期待できます。また、これまで個々で行っていた業務を共同編集ができるので業務の効率化も見込め、同年 9 月には導入を決定。さらにセキュリティ評価制度 ISMAP に登録されていることやゼロトラストによる高いセキュリティで安心して利用できるほか、コンテキストアウェア アクセスで、将来的に BYOD を本格導入できることもポイントでした。」(菅谷氏)

Google Workspace 導入までの作業や職員のトレーニングなどをサポート

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/small_ABE5804.max-2100x2100.jpg

Google Workspace の導入にあたり、約半年かけて導入作業や職員へのトレーニングを 5 回程度実施し、2024 年 3 月より Google Workspace の運用を開始。その際、Google Workspace の導入からトレーニングまでをサポートしたのは、Google Cloud 正規 トレーニング パートナーでもある G-gen でした。執行役員 ソリューションエンジニアリング本部 営業部部長の石原 久弥氏は、「2023 年 1 月に Google の担当者と足利市を訪問したのが最初でした。その後約半年かけて PoC(概念実証) を行い、同時に約 30 名の職員の方にトレーニングを実施し、Google Workspace の導入へ貢献しました。導入における最大のポイントは、ローカル ブレイクアウトで Google Workspace にアクセスする自治体として初めてのケースということで、どのように進めていくか、コスト面も含めた提案をいたしました」と話します。

Google Workspace の導入で工夫した点としては、庁内の総合行政ネットワーク(LGWAN: Local Government Wide Area Network)系ネットワークにローカル ブレイクアウト用の回線を付設し、Google Workspace に接続する構成を構築して LGWAN 系の業務端末から Google Workspace にアクセスできるようにしたことです。ローカル ブレイクアウトの構築に関しては、Google Cloud の正規パートナーであるキンドリルジャパン株式会社がサポートしています(Google Cloudとのパートナーシップについての詳細はこちら)。

足利市では現在、約 1,500 名の職員にアカウントを発行し、Google Chat や Google Meet などのコミュニケーション ツールから Google ドキュメント、Google スプレッドシート、Google ドライブなどの幅広い機能を活用しています。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/Zu_Li_Shi__shisutemuTu__02.max-1700x1700.png

共有機能により資料の集計やマージする作業を省力化し、ワンランク アップした業務の実現へ

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/small_ABE5675.max-2200x2200.jpg

行政経営部 デジタル戦略課 デジタル推進担当 主任の福田 太希氏は、「LGWAN 端末から Google Workspace にアクセスしたいという要望がありましたが、Google Workspace はインターネット上のサービスのため、LGWAN 系のネットワークから直接アクセスすることはできませんでした。しかし、今回導入したネットワーク機器でローカル ブレイクアウトにより PoC を行い 、Google Workspace の接続を確認後、構築しています」と話します。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/small_ABE5695.max-1700x1700.jpg

Google Workspace を導入した効果を、同課 デジタル戦略担当 主任の須藤 英明氏は、次のように話します。「当初、Google Cloud の担当者から共有機能の話を聞いたときは、それほどメリットを感じられませんでしたが、実際に使ってみると非常に効果的でした。例えば市役所の業務では、各部署でデータをやり取りするときにメールにファイルを添付して送信して回収し、集計してマージするといった作業が多くあります。共有機能により、この作業を大幅に省力化できました。また、BYOD で Google カレンダーや Google Chat、Google Meet などを利用できるのも本当に便利です。」

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/small_ABE5614.max-1800x1800.jpg

また、同課 デジタル戦略担当 主事の中村 太郎氏は、「Google Workspace は前職でも使っていたので抵抗感はほとんどなく、率先して新しい機能を利用するようにしています。今回、職員異動時の設定を自動化できる仕組みに Google Apps Script を利用したのですが、他社の記述言語より使いやすく、処理も速いと感じました。今後はノーコード開発アプリの AppSheet を使って業務の効率化につなげていきたいと思っています」と話します。

今後の取り組みについて菅谷氏は、「技術面では、Google Workspace で生成 AI を利用できる Gemini for Google Workspace が発表されましたが、生成 AI の活用によるワンランク アップした業務の実現に興味があり、積極的に活用してみたいと考えています。また Chromebook を安全に利用するための自動更新の提供期間が 10 年に延長されたので、コストメリットが期待できることから、業務の中核端末にできないか検討しています。業務面では、今後も庁内の働き方の改革を進めていくことが必要です。例えば、庁内のフリーアドレス化や業務を外部に持ち出せるセキュアな環境の実現などの取り組みです。BYOD もスタートしていますが、まだ限定的なので将来的には利用範囲をさらに拡大したいと考えています。この両面含めたサポートを、今後の Google Cloud には期待しています」と話しています。


https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/small_ABE5854.max-1700x1700.jpg

足利市(足利市役所)
人口約 14 万人、面積約 178 平方キロメートル。市の北部には緑豊かな山並み、中央部には渡良瀬川が流れる自然豊かなまち。東京から電車で約 1 時間とアクセスも良く、首都圏からの移住者も増えている。市内には、日本最古の学校といわれる日本遺産「史跡足利学校」、本堂が国宝に指定されている足利氏ゆかりの「鑁阿寺(ばんなじ)」などの歴史的遺産や、世界の夢の旅行先 10 か所に日本で唯一選ばれた、大藤やイルミネーションで有名な「あしかがフラワーパーク」などの見どころがある。

株式会社G-gen
(Google Cloud パートナー)
2006 年 7 月に株式会社トップゲートを設立。Google Cloud の技術をコアとした開発やコンサルティングを行う技術者集団。高い技術力と豊富な実績、信頼をベースに、Google Cloud の技術を活用したい企業をサポートしている。またコンサルティングやセミナー、技術者教育なども提供。日本初の Google Cloud 認定トレーニングパートナーでもあり、エンタープライズ企業で数多くの開発実績がある。2024 年 4 月に「Google Cloud Partner of the Year in 2024 Expansion: Japan」を受賞。2024 年 7 月に、同じく Google cloud パートナーの株式会社G-gen(2021年設立)と合併し、新生 G-gen として国内の Google Cloud 事業でのリーダーシップの強化をさらに図っている。 

インタビュイー(写真左から)
・足利市 行政経営部 デジタル戦略課 デジタル戦略担当 主任 須藤 英明 氏
・足利市 教育委員会事務局 学校教育課教育研究所教育 DX 担当 主幹 菅谷 正隆 氏
・株式会社G-gen  執行役員 ソリューションエンジニアリング本部 営業部部長 石原 久弥 氏
・足利市 行政経営部 デジタル戦略課 デジタル推進担当 主任 福田 太希 氏
・足利市 行政経営部 デジタル戦略課 デジタル推進担当 主事 中村 太郎 氏


その他の導入事例はこちらをご覧ください。

投稿先