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顧客事例

JR九州: Google Workspace with Gemini を導入し、業務の内製化とサービス品質の底上げを目指す

2026年10月30日
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Google Cloud Japan Team

九州の鉄道事業を中核に、不動産やホテル、流通・外食など、生活・移動・商業等、多角的に事業を展開する九州旅客鉄道株式会社(以下、JR九州)。同社は近年、生成 AI の活用基盤整備を進めており、鉄道をはじめとする複数の事業領域に Google Workspace with Gemini を導入。非エンジニアによるアプリケーション開発から、マーケティング業務の内製化まで、現場主導でユースケースを生み出しています。一連の取り組みとその成果について、プロジェクトを牽引する 4 名に話を伺いました。

利用しているサービス:
Google Workspace with Gemini, 生成 AI

業務改革の DX と価値創造の「思考のパートナー」として生成 AI に着目

「安全を最優先し、お客さま視点で考え、安心で快適な毎日と “わくわく” するときをつくる」。JR九州はこの使命のもとで安心・安全なサービスを提供しながら、九州全域のまちづくりや地域活性化で大きな役割を担ってきました。また同社は、中期経営計画で持続可能な事業運営を掲げ、経営基盤を強化すべく DX(デジタル トランスフォーメーション)を推進。総合企画本部 デジタル変革推進部で担当課長を務める小林 健太郎氏は、取り組みの重要性を次のように説明します。

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「全国の他の地域と同様、弊社グループを取り巻く環境でも、人口減少・少子高齢化や人手不足などが進んでいます。これらの変化を踏まえて、『九州の元気を、世界へ』という経営理念を実現するには、DX の推進によるお客さま体験の進化と新領域の創造とオペレーションの変革、働きがいと生産性の向上が欠かせません。それを実現する手段の一つとして、私たちは生成 AI に着目しています。新たな価値を生み出すためには、資料作成や議事録作成などの定型業務を効率的に行い、創造的な業務や思考に充てる時間を確保することが重要です。生成 AI は作業を自動化・省力化するだけではなく、企画の立案や壁打ちなどにも極めて有用ですので、人間が主体となり、ともに考えを深めてくれる『思考のパートナー』として位置づけています。」

このような中、デジタル変革推進部では、2023 年 5 月にガイドラインを策定し、生成 AI の活用を促してきました。やがて各部署がそれぞれの取組みに応じたサービスを利用する段階になると、セキュリティやガバナンスの観点から、生成 AI サービスの導入窓口を一本化。2025 年 9 月から Google Workspace with Gemini の PoC(概念実証) を開始し、同 11 月には、既存の生成 AI サービスと並行して使用する方針を決定しました。同部 主査の姫野 晋之介氏は、当時の状況を振り返ります。

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「2025 年 9 月頃、Google Cloud の営業担当から、Gemini を試してみませんかという話がありましたので、AI・データ活用チームのメンバーを配置している部署を中心に PoC をしてもらいました。すると『出力される情報の精度が、想像していたよりもはるかに高い』『業務ですぐに使えるレベルだ』と、非常に大きな反響がありました。 PoC では KPI を定めず、『どんなことができるか』という視点で検証しましたが、Gemini は図版・コード作成用の Canvas や資料を整理できる Gemini Notebook など、実践的なツールも多い。エンタープライズ グレードのセキュリティも担保でき、Google Cloud のサポートも手厚いということで、導入を決めました。」

全員参加型の勉強会を経て、Gemini の活用から生まれた 4 つのユースケース

PoC は運輸部、新幹線部、未来市場戦略部、営業部、工務部、建設工事部など各部署の担当者、計約 30 名を中心に行われ、運用開始の際には約 400 名分のアカウントが導入されています。姫野氏は、利用の普及を図るうえで、AI 利用の心理的ハードルを下げることが重要だったと語ります。

「一番苦労したのは『自発的な活用を生み出すこと』でした。実際に導入を進めると、部署間の差というよりも、同じ部署内でも積極的に活用する人とそうでない人がいることがわかりました。これを解消するために、希望者はすぐに試せる環境を整えつつ、各部署のAI・データ活用チームのメンバーと連携して、部署内での定着を推進しています。この際には、部署単位での全員参加型勉強会を開催し、同じ部署の活用している人のユースケースを紹介するなど、あまり利用していない社員の関心が高まるような機会を創出するようにしています。」

利用層が拡大する中、各部門からは示唆に富むユースケースが次々と生まれてきます。鉄道事業本部 運輸部企画課 DX推進プロジェクト 主席 上城 悠貴氏のチームでは、エンジニア経験のない担当者が、業務改善アプリケーションの内製化に成功しました。

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「最初に制作したのは、営業運転中の車両のデータを、リアルタイムで分析・可視化するウェブアプリです。以前は蓄積されたデータがあまり活用されていませんでした。現在も検査は一定間隔で実施していますが、データを常時監視できるようになり、検査代替に向けた検証を進めています。その次に作ったのは、社員の勤務シフトを自動生成するアプリです。鉄道会社の勤務は、夜勤や休日当番といったシフト、個人のスキルなど考慮すべき項目がたくさんありますが、単に枠を埋めるのではなく、個人の負荷やスキルに応じて、最適なシフトを組めるようになりました。このアプリは条件を変更すれば他の部署にも転用可能で、最終的には人事にも活用できるのではないかと考えています。」

上城氏によれば、これらのアプリの開発はプログラミングの専門知識を持たない担当者が実施しています。

「いずれも Python の Streamlit を使って構築しましたが、コードの 9 割以上を Gemini が書いてくれました。具体的なプロセスとしては、まず Gemini に自然言語で要件を伝える。そこで出力されたコードを検証して再び改良するという作業を繰り返し、2〜3 か月で完成させることができました。業務における定量的な成果はまだ測定していませんが、外部ベンダーに開発を依頼すれば半年から 1 年かかる作業を、エンジニアではないスタッフが短期間で完了できたわけですから、コストと時間の削減という意味でも画期的な出来事だったと思います。」


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(Q-monitor 車両センサデータの可視化・分析用アプリ)

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(勤務 複雑な条件が絡む勤務シフトの作成を支援するアプリ)

一方、営業部 主査の永留 宏一郎氏が所属するチームは、これまで注力できていなかったウェブマーケティング業務の内製化を行っています。

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「活用したのは、ランディング ページのたたき台作りです。営業部には専任のエンジニアがいないため、以前は私たちが手書きでラフを書く段階から、時間をかけて作業を行っていました。Gemini なら『こういうページを作りたい』と指示するだけで、複数のサンプルを出力してくれます。ページ内に検索窓を実装するプロセスも、かなり省力化できました。従来は JR九州のトップページから予約サイトに誘導し、お客さまに改めて区間と日付を入力していただく方法を取っていました。しかし Gemini を使って新たに作成した区間別の紹介ページに検索窓を設け、そこに日付と時間を入力すると、実際の予約手続きまで一気に進めるような仕組みにしました。」

永留氏は、ウェブマーケティングのもう一つの柱である SEO 対策においても、業務の進め方が大きく変わったと説明します。

「九州には人気の高い観光列車がありますので、SEO(検索エンジン最適化)を工夫して、できるだけ多くの人に表示したいと考えていましたが、この作業も Gemini のおかげで内製化できました。SEO のスコアは 40 点ぐらいから約 70 点にまで上がっています。しかも自分たちで気軽に設定できるようになりましたので、他のページもどんどん改良したいと考えています。」

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社内資料を Gemini Notebook に集約し、安全管理のノウハウ継承や人材育成に活用

Google Workspace with Gemini の導入は、さまざまな定性的な成果も生み出しています。もともと同社では、社員によるデジタルツールを活用した業務改善の試みを「デジタルチャレンジ」と命名。取り組み件数と効果に応じて、開発を行った社員を「チャレンジャー」「リーダー」「ヒーロー」の 3 カテゴリーで表彰してきました。今後はその表彰対象に生成 AI の活用を含め、業務フローへの融合と利用拡大を図っていく予定です。デジタル変革推進部では、最新の技術トレンドなどの情報共有にも Gemini Notebook を利用。姫野氏によれば活用は他の部署でも進んでいます。

「社内には安全管理や保守点検に関して、手書きの報告書をスキャンした PDF 資料や、表形式の記録ファイルなどが数多く残っていますので、Gemini Notebook に集約し、メンバーが参照できるようにする部署も出てきています。これらの新たな取り組みは、現場で培われてきた技術やノウハウを体系化して次代に継承していく試み、あるいは人材育成にもつながると考えています。」

プログラミングの知識を持たない社員による、業務改善アプリケーションの開発、ウェブマーケティング業務の内製化、そして安心安全を高めるための情報資源の掘り起こしと共有。意欲的な挑戦を続けてきた JR九州は、DX 戦略の柱でもある「働きがいと生産性の向上」も実現すべく、生成 AI をさらに積極的に活用しようとしています。プロジェクトを束ねる小林氏は、今後の展開について以下のように述べていました。

「弊社の場合は、サービスの品質向上や業務の効率化などを図っていく過程で、生成 AI を活用するようになりました。これから重要になるのは、全社的に生成 AI をいかに業務フローに組み込み、生み出されたリソースを『安全の追求』や『新たな価値創造』につなげていくかだと考えています。既存のレガシー システムとの連携など、技術的な課題は残っていますが、Google Workspace with Gemini をはじめとする先進のテクノロジーを適材適所で活用しながら、『九州の元気を、世界へ』届けるための挑戦を続けていきます。」


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九州旅客鉄道株式会社(JR九州)
1987 年(昭和 62 年)設立。九州エリアで 2,342.6km、596 駅の鉄道ネットワークを運営し、地域の生活と移動を支える旅客鉄道会社。鉄道事業では九州新幹線や個性豊かな D&S 列車(デザイン&ストーリー列車)などを運行している。また、「JR博多シティ」をはじめとした駅ビル商業施設の経営、不動産、ホテル、流通・外食事業など、生活・移動・商業を一体とした多角的なまちづくりも九州全域で推進している。

インタビュイー(写真右から)
・デジタル変革推進部 担当課長 小林 健太郎 氏
・デジタル変革推進部 主査 姫野 晋之介 氏
・営業部 主査 永留 宏一郎 氏
・運輸部 主席 上城 悠貴 氏


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